著者
清杉 孝司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

噴火記録から噴火の発生率を見積もる際には,噴火記録の数え落しを考慮する必要がある.世界の大規模爆発的噴火(LaMEVE)データベース(Crosweller et al., 2012, Brown et al., 2014)の内,日本の噴火は39%を占める(Kiyosugi et al., 2015).一方,これまでの分析の結果,噴火の規模が大きくなると数え落しの程度は減少するものの,第四紀以降の大規模噴火にも数え落しがあることがわかっている.例えば,89 %のVEI 4噴火が10万年以内に,65–66 %のVEI 5噴火が20万年以内に,46–49 %のVEI 6噴火が30万年以内に,36–39 %のVEI 7噴火が50万年以内に失われていることがわかった(Kiyosugi et al., 2015).また,日本と世界の噴火頻度の比較から,世界の噴火記録の数え落しは日本の7.9倍から8.7倍であると示唆される(Kiyosugi et al., 2015). 噴火の数え落しをモデル化するためには,こうした日本全体のデータの分析に加え,地域ごとや時代ごとに見たときのデータの不均質性を検討することが必要である.数え落しの主要な原因は,歴史記録がないことや,火砕堆積物の浸食・変質,新しい堆積物による被覆,浸食や被覆による給源火山自体の消失などであると考えられる.そのため噴火の数え落しは地質学的・歴史学的事情を反映して時空間的な不均質性を持つ.例えば,伊豆‐ボニン弧は大規模噴火の火砕堆積物が保存されにくい小規模の火山島からなっているため,大規模な噴火の地質記録が多く失われていることが示唆される.こうした異なる地質条件による噴火の数え落しを理解することは,噴火の再発生率を推定する際に重要である.また,小山(1999)は日本の歴史地震記録が政治的・社会的状況に応じて二つの時期(7世紀末から西暦887年までの時期と17世紀初めから現在までの時期)に増加することを指摘した.このような歴史記録を含む最近の噴火記録は,噴火の数え落しをモデル化する際の重要なファクターであるため,記録の時間的不均質性の詳細な分析が必要である. 本研究では日本の噴火記録の時空間的不均質性について議論する.日本の噴火記録は世界の噴火記録の約39%を占めるため,日本の噴火記録の分析は世界の噴火記録の数え落しと噴火再発生率の推定に有用である. 引用文献:Brown et al (2014) Journal of Applied Volcanology, 3:5.Crosweller et al (2012) Journal of Applied Volcanology, 1:4.Kiyosugi et al (2015) Journal of Applied Volcanology, 4:17.小山 (1999) 地学雑誌, 108(4), 346-369.

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