著者
覚張 隆史 米田 穣
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

遺跡出土遺存体の動物考古学的・植物考古学的研究に基づくと、農耕牧畜以前のヒトはhunter-gathererの生業形態であったと考えられており、後期更新世末までのイヌは狩猟と採集の生業形態に深く関わる形でヒトのニッチェに近づいたと考えられる。特に、狩猟に有利な機能形態をもつ石器群の出土例の増加とともに、遺跡からイヌの出土例も増加する。西アジアのナトゥーフ文化期のAin Mallaha遺跡およびドイツの中石器時代のOberkassel遺跡から約1万4千年前~1万2千年前と比定された最古のイヌが出土しており、遊動性から半定住性社会の移行期において、イヌがヒトと移動を共にした可能性が指摘されている。一方、東アジアの後期更新世末において、遊動性から半定住性社会に移行する時期は、土器が出現し始める土器新石器時代に相当する。東アジアにおける土器新石器時代の遺跡からイヌが出土した最古の例は、日本列島の関東の夏島貝塚(神奈川県)から出土した犬骨破片である。夏島貝塚から出土した犬骨は、同遺跡から採取された貝および炭化物の放射性炭素年代測定に基づいて、12,117–9,281 BPと報告されている。また、中国のJiahu遺跡(9000 -7800 calBP)やDadiwan遺跡(7560-7160calBP)日本の上黒岩岩陰遺跡(7420–7266 calBP)が報告されており、少なくとも東アジアにおいてはこれらの時期以前からイヌが存在していた可能性が考えられる。特に、日本列島においてこれらの遺跡出土犬がヒトとどのような関係であったかを示した研究例はまだ少ないのが現状である。 そこで本研究では日本列島の遺跡出土犬の骨コラーゲンの炭素・窒素同位体比に基づいて、各時代の犬の食性の変遷を評価することを試みた。また、比較試料としてニホンオオカミと古人骨を分析し、ヒトと犬の関係について考察を試みた。 その結果、縄文犬は多量の海生魚類・貝類・海獣類も存在していたことがわかり、弥生時代以降に陸生食物資源に依存するという変化が明確に検出された。これは、縄文時代から弥生時代にかけてのヒトの生業活動の変化が、犬にも反映している可能性を示唆している。

言及状況

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【共同利用成果・国内学会】覚張 隆史,米田 穣.「日本列島における遺跡出土犬及びニホンオオカミの食性復元」 JpGU2018, 2018年5月20-24日, 幕張メッセ, 日本. https://t.co/F6W836FUf6

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