- 著者
-
中田 節也
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
日本の火山研究者、特に若い科学者は、IAVCEIとIUGGの関係をよく認識していないようだ。その理由は、IAVCEIと比較して、IUGGが彼らには可視的ではないためである。彼らが最初に挑戦することができるという国際会議としてIAVCEIが指導教官から紹介されることが多い。IAVCEIの存在は彼らが会員である日本火山学会(VSJ)でもよく見えている。この100年間、IAVCEIに対しては、久野 久、荒牧重雄、中田節也らの会長など、日本の研究者がIAVCEI理事を務め、IAVCEI学術総会が1962年に東京、1981年に東京・箱根、2013年に鹿児島で開催された。IAVCEIの2番目に大きい会議である火山都市国際会議(COV)は、科学者と非科学者が集って火山災害を軽減するために議論するフォーラムで、1998年以降、IAVCEI総会と学術総会の合間の2年ごとに開催されるものであるが、1988年に鹿児島市で開催された国際火山会議に端を発するものである。2007年には島原市で第5回COVを開催した。IUGG総会は2003年に札幌で開催されたが、それでもIUGGは若い火山研究者、ひょっとしたら中堅の研究者の間でもあまり知られていない。例えば、最近のIAVCEI学術総会は1000人以上の参加者を集めるが、IUGG総会時のIAVCEI総会には300人程度の参加者しかいない。この数は最近のCOVの約1000人の参加者よりはるかに少ない。この理由の1つはIUGG総会では組織される火山巡検がないということがあるかもしれないが、それよりも単純に会議の規模が理由であろう。IUGGの各アソシエーション自体の研究分野が十分に広いので、8アソシエーションの集まりは若い研究者が参加するには分野が広すぎる。彼らは、自分たちの学会では心地よく感じるが、AGUやEGUではビジネスライクに映るかもしれない。これはJpGUと個々の国内学会との関係にも似ているかもしれない。私たちは多くの分野のアソシエーションが集まって会議を開催することのメリットを確認し共有することが必要であろう。さらに、IUGGや国際学術会議(ISC)のような政府が分担金を払う団体の役割についても私たちの間で確認し直すべきである。この場合、会議への参加者数を増やすことが優先課題ではない。地球規模の気候変動、および大地震や火山噴火などの地域の地質学的危害は、リスクを軽減するために世界的に最優先課題となっている。このような状況の下で、国連は2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)を明確にしており、政府によって活動が保証されているIUGGやISCの任務はこれらの課題解決でも拡大しているといえる。