- 著者
-
島村 泉里
- 雑誌
- JpGU-AGU Joint Meeting 2020
- 巻号頁・発行日
- 2020-07-04
空気抵抗の大きさを求める1つの要因に抵抗係数というものがあげられる。しかし、現在抵抗係数は実験から得る以外の方法で数値をわり出すことはできていない。そこで、本研究対象である抵抗係数についての知見を得るため、最初に、形状の違いによる空気抵抗の大きさの変化を、地上15.75m(本校5階)から物体を落下させることにより比較した。実験1として体積の等しい「立方体・四角錐・円錐・球」の4種類(表1)を木材から切り出し、落下させた。しかし、物体の形状の種類と実験数が不足していたこと、更に使用した木材の密度が一定ではなく形状が不精密であったこと、そして落下時に水平方向の軸を中心とする回転をしてしまったことにより結果が不正確であった。これらの点を克服するため、実験2として実験1と同様に体積の等しい「球・円錐・四角錐・円柱・直方体・立方体」の6種類(表1)の物体を3Dプリンターを用いて作成した(フィラメントとしてPLA樹脂を使用し、後述の実験3も同様である)。そのうえで物体の中心に穴をあけナイロン製のヒモを通すことによって回転を抑えた。実験1,2から、前面の形状が球形の時最も抵抗が小さく、次いで錐形、そして平面の順に大きくなるという結果を得ることができた。 角錐と円錐間・立方体と直方体間では共に、落下にかかる時間の差は前面投影面積の差以外による影響は極めて小さいと判断できた。この結果は、高等学校や大学等で用いられる力学や流体力学の参考書等に記載されている抵抗係数から算出できる抵抗の値の大小関係と一致する。また、実験2において落下をさせた6種類の形状のうち、双方とも先端は球形ではあるものの飛行機や新幹線等の先端等、日常生活の中で最も利用頻度が高く、形状のパターンを複数作成することが容易である円錐に焦点を当てた。そこで、頂角の大小変化に伴う抵抗係数の変化を「静止した物体に流体を当てる方法」、「終端速度から抵抗係数を求める方法」による2つの実験(それぞれ実験3,4とする)からそれぞれ算出する。実験3では3Dプリンターを用いて作成した中心角(頂角の半分)の異なる8種類(表2)の物体をそれぞればねばかりで吊るし、物体より一定距離離した位置から水を自由落下させ、その際物体にかかった圧力 をグラム重単位で物体にかかる力を計測し、そこから圧力を算出した。実験結果から抵抗係数を算出し、中心角の変化と対応するグラフを作成した(図1)。図1では中心角の増加に伴い抵抗係数(Cd)が指数関数的に増加する曲線に近似した。また、実験にて得られた抵抗係数を関数表示ソフト(FunctionView Ver 6.02)上に表示し 、近似する関数を推定し次の式を得ることができた。(θは中心角の大きさ(rad)を表す)Cd=0.36+1.2exp[4.2{θ-(π/2)}]この関数は指数関数であるため実際に使用する際の代入計算が煩雑であり、近似式の確度の確認がとれていない。計算の煩雑さを軽減し、標準偏差を用いてより確度の高い式の推定を行うために、対数を取り1次近似を行う。また、実験3で得られた抵抗係数の値は上記の参考書等に記載されている値よりも低い値となっていた。この原因としては落下させた水の出水口の面積が物体の前面投影面積よりも小さくなってしまったことや、流体の中で物体が移動する場合と停止した物体に流体を当てた場合では、かかる力に変化があるのではないかと考えられる。そのため、水中で物体を落下させる実験の実施を検討している。円錐に焦点を当てた次の実験4として、厚さが一様なコピー用紙(PPC用紙)を用いて頂角の異なる錐形(底面なし)を作成し、可能な限り同じ環境で(著者宅内同地点にて)地上2.5mの高さから落下をさせ、終端速度に確実に達している地上2.0m地点から着地までにかかった時間を計測する。計測した時間から終端速度を算出し、抵抗係数を求める。頂角が大きくなると抵抗を受け、まっすぐ落下させることが困難になっていくため、指向性を持たせるために先端に落下速度に影響しない適度な重量のおもりをつけることによって安定を図る。実験4 でも実験3と同様に算出した抵抗係数と頂角の変化を対応させたグラフを作成し、関数ソフトにて近似するグラフの推定を行う。本研究では実験から求めることしかできない抵抗係数を数式によって算出できるようにすることを目標としている。