著者
日下 あかり 内田 由紀 田邊 輝真 世良 俊樹 多田 昌弘 伊関 正彦 竹崎 亨 楠 真二 山野上 敬夫
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】2018年7月の西日本豪雨においては、広島県でも各地で土砂崩れ、河川の氾濫などにより甚大な被害が発生した。土砂災害の被災者で軽微な挫創から破傷風を発症した1症例を経験したので報告する。【臨床経過】70歳台、男性。土砂崩れにより自宅が倒壊し、およそ3時間後に土砂の中から救出され当院へ搬送された。全身の土砂を洗浄後に検索を行ったが、大きな外傷を認めず、両膝の約2cmの挫創を洗浄・縫合し、破傷風トキソイドワクチンを投与して救命センターへ入院とした。感染兆候を認めず一般病棟へ転棟し離床を進めていたが、入院10日目に呂律困難および嚥下困難を自覚、入院11日目からは開口障害が出現した。破傷風と診断し、抗破傷風ヒト免疫グロブリン1500単位を投与、ICUへ入室しペニシリンG300万単位×6回/日投与を開始した。その後も開口障害と嚥下障害は進行し、唾液を嚥下できず吐き出すようになり、入院13日目に開口制限は0.5横指まで増悪、経口摂取を中止し経鼻胃管による経腸栄養に切り替えた。入院16日目頃より開口障害は改善傾向となり、21日目に経口摂取を再開し経鼻胃管を抜去、後遺症なく36日目に自宅退院となった。【結論】軽微な創傷からでも、あるいは明らかな外傷がない場合でも、破傷風を発症する可能性があることは知られている。本症例は比較的軽微な挫創であり、受傷後6時間以内に初療がなされ、破傷風トキソイドワクチンが投与されたにもかかわらず破傷風を発症した。土砂災害による外傷患者に対しては、過去の予防接種により十分な抗毒素抗体価が期待できる場合を除き、外傷の程度や受傷からの時間によらず積極的な破傷風予防・治療が必要と考えられた。

言及状況

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《平成30年7月豪雨》では、破傷風感染の事例も存在し、水害復興作業には接種必須なのが【破傷風ワクチン】です。 https://t.co/it5Q5djMpD

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