著者
林 良雄 今野 翔 ⼩林 清孝 神⾕ 亘 千⽥ 俊哉 千⽥ 美紀 ⼩島 正樹 ⽩坂 善之
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パンデミックを引き起こし、世界中に感染が拡大している。この克服には、原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とする治療薬の開発が不可欠である。ウイルスプロテアーゼ阻害剤は、エイズやC型肝炎の特効薬となっているが、SARS-CoV-2も感染細胞でのウイルス複製に不可欠な3CLプロテアーゼ(3CL-ProまたはM-Pro)を有している。したがって、当該酵素を標的とする選択的阻害剤は、明確な作用機序に基づいたCOVID-19治療薬の候補になると思われる。 我々は、 2002年のSARSの発生を機にSARS-CoVが有する3CL-Proの阻害剤開発を進めてきた。1-6 その結果、 アリールケトン型阻害剤4-Methoxyindole-2-carbonyl-Leu-Ala((S)-2-oxopyrrolidin-3-yl)-2-benzothiazole(YH-53、 Ki = 6 nM against SARS-CoV 3CL-Pro)の創製に至った。本阻害剤は、当該システインプロテアーゼの活性中心にあるSH基に対して、アリールケトン部が可逆的な化学反応を起こし、強力な競合型阻害を示す。 SARS-CoVとSARS-CoV-2における3CL-Proのアミノ酸配列相同性が非常に高いことから、我々はSARS-CoV-2に対するYH-53の効果を現在検討している。最新のデータではYH-53はSARS-CoV-2の3CL-Proに対し、強力な酵素阻害活性を示す。更に細胞ベースの抗ウイルス評価においてSARS-CoV-2の感染を良好に抑制することを確認した。シンポジウムではYH-53の開発経緯と共に評価結果を報告したい。References: 1) Sydnes, O. M., Kiso, Y., et al., Tetrahedron, 2006, 62, 8601-8609. 2) Regnier, T., Kiso, Y., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19, 2722-2727. 3) Konno, S., Hayashi, Y., et al., Bioorg. Med. Chem., 2013, 21, 412-424. 4) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 65, 436-447. 5) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 68, 372-384. 6) Thanigaimalai, P., et al., J. Med. Chem., 2016, 59, 6595-6628 (総説).