著者
〓原 昌司 大谷 敏郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.588-595, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ポテトチップからの極微弱発光現象を画像で計測し,得られた画像を比較・解析した.また,極微弱発光現象を引き起こす環境条件や原因についても検討した結果,ポテトチップの極微弱発光現象に新たな知見が得られると伴に,極微弱発光計測の品質評価への応用も可能であることが明らかになった.(1) ポテトチップからの極微弱発光は,周囲温度の影響を顕著に受け,高温になるほど発光量が多くなった.特に40°C以上になると発光量はかなり多くなった.(2) 試料周辺の酸素濃度を低下させると発光量も減少することから,極微弱発光現象は,酸素が不可欠な化学反応であることが分かった.(3) ポテトチップの発光を画像計測することで,褐変した部分からの発光量が多いことが明らかになり,発光の原因にポテトチップ中に含まれるアミノ-カルボニル反応物質も関与していることが示唆された.(4) ポテトチップの極微弱発光量の経時変化を測定すると,開封後からある時間までは徐々に増えていき,以後減少するという油の自動酸化に特有の変動を示した.(5) 製造後日数の異なる試料の極微弱発光を計測したところ,新しいものほど発光量が多く,古くなると発光量が減少することが明らかになった.また,製造後1ヶ月以内に極端に発光量が少なくなることが明らかになった.(6) 極微弱発光計測の新しい食品の品質評価手法への応用の可能性が示された.