著者
山本(前田) 万里 廣澤 孝保 三原 洋一 倉貫 早智 中村 丁次 川本 伸一 大谷 敏郎 田中 俊一 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.23-33, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

内臓脂肪を減少させメタボリックシンドローム(MetS)を予防する食品は有用であり,MetS改善作用の評価は,農産物単品にとどまってきたため,日常消費される組み合わせ食品としての有用性の検証が必要である.肥満傾向を有する健常な成人の昼食に,機能性農産物を組み合わせた機能性弁当を継続摂取させ,機能性農産物を使用していないプラセボ弁当を摂取した場合と比較して,腹部内臓脂肪の減少効果について検証した.BMIが25以上30未満および内臓脂肪面積が100cm2以上の肥満傾向を有する健常な成人を対象に,ランダム化プラセボ対照試験を行った.被験食品は,機能性農産物を使用した「おかず」,「べにふうき緑茶」および「米飯」(50%大麦ご飯および玄米),プラセボ対照食品は,機能性農産物を使用しない「おかず」,「茶」(麦茶)および「米飯」(白飯)であり,3因子の多因子要因1/2実施デザインを採用して,試験群は機能性の「おかず」「茶」「米飯」それぞれ1要素のみ被験食品とする3群とすべての機能性要素で構成される被験食品1群の計4群とした.平日の昼食時に12週間摂取した.主要評価項目は,内臓脂肪面積,副次評価項目は,ヘモグロビンA1c (HbA1c),グリコアルブミン,1,5-AG(アンヒドログルシトール)などとした.159名が登録され中途脱落はなかった.全期間の80%以上の日で弁当の配布を受けたPPS (Pre Protocol Set)解析対象者は137名であった.試験に入ることによる効果はPPSで-8.98cm2と臨床的にも統計的にも有意であった(p=0.017)).主要評価項目のサブグループ解析の結果,試験開始時の内臓脂肪面積が中央値100∼127cm2の被験者で,被験米飯の効果はPPS で平均-7.9cm2であり,p値は0.053とほぼ有意であった.被験米飯については女性でも有意な(平均値-14.9cm2,p=0.012)減少効果が観察された.副次評価項目では,1,5-AG に関してべにふうき緑茶の飲用で有意差が認められた.また,安全性に関して特筆すべき問題は生じなかった.食生活全体の変化と機能性農産物を使用した機能性弁当の連続摂取により,内臓脂肪面積の低減効果等の可能性が示唆された.
著者
〓原 昌司 大谷 敏郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.588-595, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ポテトチップからの極微弱発光現象を画像で計測し,得られた画像を比較・解析した.また,極微弱発光現象を引き起こす環境条件や原因についても検討した結果,ポテトチップの極微弱発光現象に新たな知見が得られると伴に,極微弱発光計測の品質評価への応用も可能であることが明らかになった.(1) ポテトチップからの極微弱発光は,周囲温度の影響を顕著に受け,高温になるほど発光量が多くなった.特に40°C以上になると発光量はかなり多くなった.(2) 試料周辺の酸素濃度を低下させると発光量も減少することから,極微弱発光現象は,酸素が不可欠な化学反応であることが分かった.(3) ポテトチップの発光を画像計測することで,褐変した部分からの発光量が多いことが明らかになり,発光の原因にポテトチップ中に含まれるアミノ-カルボニル反応物質も関与していることが示唆された.(4) ポテトチップの極微弱発光量の経時変化を測定すると,開封後からある時間までは徐々に増えていき,以後減少するという油の自動酸化に特有の変動を示した.(5) 製造後日数の異なる試料の極微弱発光を計測したところ,新しいものほど発光量が多く,古くなると発光量が減少することが明らかになった.また,製造後1ヶ月以内に極端に発光量が少なくなることが明らかになった.(6) 極微弱発光計測の新しい食品の品質評価手法への応用の可能性が示された.