著者
イスラム カジ レザウル 井之上 準
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-5, 1988

バングラデシュ全土はLand levelによって5つに区分されるが, そのうち深水稲が栽培されているのは, Lowland (水深: 1.83m以上) , Medium Lowland (0.91-1.83m) およびMedium Highland (0.30-0.91m) の3地域である.本実験では, これら3地域から蒐集された335品種について節間伸長性を調査した.なお, 節間伸長性の大小は最低伸長節間の位置の高低によって判定した.得られた結果の概要は次ぎの通りである.<BR>1. 伸長最低節間の位置は第6節間から第16節間であったが, 最も多いのは第8節間の品種 (全体の約26%) , 次ぎは第9節間の品種 (約17%) で, 平均は10.1±2.7であった.なお, 東南アジアの浮稲にはほとんど見られないような, 第6節間が伸長する品種が約2%あった.<BR>2. 伸長最低節間の位置は当該品種が栽培されている地域の深水程度と密接な関係にあり, Lowlandの品種群で最も低く (8.1±1.8) , 次ぎはMedium Lowlandの品種群で (9.9±2.6) , Medium Highlandの品種群は最も高かった (11.6±2.3) .<BR>3. 浮稲では伸長最低節間の位置が低い品種ほど, 播種後節間伸長を開始するまでの期間は短い.従って, Land levelに関係なく伸長最低節間の位置が低い品種を栽培すれば, 播種から水位が上昇し始めるまでの日数が短いので, その期間に干害を受けることはほとんど無いはずであるが, 実際には干害は問題となっている.この原因は, 本調査で明らかにされたように, Land leve1が高い地域ほど伸長最低節間の位置が高い品種が栽培されているたあで, これは浮稲においては伸長最低節間の位置が低い品種ほど収量が低いという関係があるたあであろうと思われる.