著者
エッセルストロム エリック
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 = Journal of humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.106, pp.81-96, 2015

特集 : 領事館警察の研究本稿が考察するのは,日本と欧米列強の狭間で起こった日本領事館警察に関連しての外交的紛争の本質である。朝鮮と南満州のいくつかの事例を考慮しつつ,1919年の天津租界での日米衝突事件に対しより深い分析をして,最終的に1930年代の日本領事館警察の正当性について日本 と欧米学者間で行われた国際法的論争に注目する。特に論じたいのは,欧米各国も不平等条約 体制による利権を得たから日本領事館警察に対しての欧米批判は,中国側のその体制による国 家主権が被害された主張と同情心によって生まれたものではなく,欧米各国の権利が侵された 時だけに起こるという事である。その他,1930年代の日中関係の悪化は日本領事館警察の活動 が一つの原因であると信じてた欧米評論家が確かに数人いたが,領事館警察の正当性と必要性 を完全に認められなかった者は非常に少なかった。一方で日本人評論家は,中国本土や世界中 の植民地で欧米列強によって敷かれた治外法権体制こそが日本領事館警察制度の正当性を示す ものであるとよく論じた事。