著者
岡本 和恵 Okamoto Kazue オカモト カズエ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.22, pp.205-235, 2010-02

近年、外国語教育の世界では、長年支配的だったネイティブ至上主義が批判され、「ネイティブ」教師を「ノンネイティブ」教師より評価する現状を見直す動きが高まっている。本稿では、中国人日本語教師である研究協力者ラナさんと共にティーム・ティーチングを行い、実践を通して明らかになった彼女と筆者の意識と筆者の学びを描いた。ラナさんは、「外国人」で「正しい日本語」が使える日本人教師を最もいい教師だとみなしているが、筆者は彼女の日本人教師像と異なる自分に戸惑った。さらに自分が学生を理解できておらず、自分と学生との間に「外国人の壁」があることも分かった。ラナさんは「教師およびネイティブは間違えない存在」だというプレッシャーに苦しめられ、自信が持てないでいるものの、実は媒介語の使用や学生への理解というL2ユーザーの強みを生かして、素晴らしい実践をしている。彼女のようにL2ユーザーとして教室の「quality of life」への理解を深め、より良い実践を模索する教師から、「ネイティブ」教師が学ぶことは大きいだろう。