出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究. 別冊
巻号頁・発行日
vol.2, 2006-02

2004年度博士論文に修正、加筆したもの : 高木千恵「関西若年層の話しことばにみる言語変化の諸相」
著者
中井 好男 Nakai Yoshio ナカイ ヨシオ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.30, pp.93-110, 2018-02

本稿は、日本で留学を経て就労している中国出身の王さん(仮名)の学習経験に関するライフストーリーから、日本語学習、学習者オートノミーを社会的文脈から捉えようとするものである。分析の結果、生活者としての王さんは、日本語は社会的実践のために必要なツールであり、日本語学習は日本語を用いた社会的実践の遂行に伴って起こるものであると捉えていることが分かった。そして、王さんにとっての日本語学習は、社会的アイデンティティをもたらす声となることばのジャンルの習得であり、非線形的なシステムである複雑系理論の中で様々な要因によって創発されることが明らかになった。さらに、この創発の原動力となるのが学習者オートノミーであり、学習者オートノミーは、王さんを取り巻く社会的文脈に潜む要因と王さんとの社会的相互作用を通して構築される主体性であることが示された。王さんの学習経験のストーリーには、周囲の要因が持つアフォーダンスを活用し、自身の声を獲得することで、自己実現を図るだけではなく、社会的文脈の中で受ける不利益を利益へと転換してきた過程が示されており、日本語学習支援や学習者オートノミー育成を考える上で重要な示唆が得られたと言えよう。
著者
岡本 和恵 Okamoto Kazue オカモト カズエ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.22, pp.205-235, 2010-02

近年、外国語教育の世界では、長年支配的だったネイティブ至上主義が批判され、「ネイティブ」教師を「ノンネイティブ」教師より評価する現状を見直す動きが高まっている。本稿では、中国人日本語教師である研究協力者ラナさんと共にティーム・ティーチングを行い、実践を通して明らかになった彼女と筆者の意識と筆者の学びを描いた。ラナさんは、「外国人」で「正しい日本語」が使える日本人教師を最もいい教師だとみなしているが、筆者は彼女の日本人教師像と異なる自分に戸惑った。さらに自分が学生を理解できておらず、自分と学生との間に「外国人の壁」があることも分かった。ラナさんは「教師およびネイティブは間違えない存在」だというプレッシャーに苦しめられ、自信が持てないでいるものの、実は媒介語の使用や学生への理解というL2ユーザーの強みを生かして、素晴らしい実践をしている。彼女のようにL2ユーザーとして教室の「quality of life」への理解を深め、より良い実践を模索する教師から、「ネイティブ」教師が学ぶことは大きいだろう。
著者
脇坂 真彩子 Wakisaka Masako ワキサカ マサコ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.25, pp.105-135, 2013-02

タンデム学習とは、母語の異なる2人がペアになり、互恵性と学習者オートノミーの原則に基づいて、互いの言語や文化を学び合うという学習形態である(Brammerts, 2005)。 本 稿 で は 、ドイツと日本でのインターネットを介した遠隔のタンデム学習(Eタンデム)で学習を続けたドイツ人日本語学習者の動機がどのような要因によって変化したのかを検討した。研究方法には手段的なケース・スタディを用いた。研究協力者はEタンデムを実践したドイツ人日本語学習者Davidさんである。分析の結果、Eタンデム・プロジェクトにおけるDavidさんの動機は、1)自由に自己表現ができたこと、2)母語話者とのやり取りで言語使用や相手の文化を学べたこと、3)日本語の上達が感じられたことによって高められており、また、Eタンデム・プロジェクトとは直接関係のない要因からのストレスやプロジェクトの枠組みの負担によって下げられていたことが明らかになった。
著者
平塚 雄亮 Hiratsuka Yusuke ヒラツカ. ユウスケ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.24, pp.55-74, 2012-02

本稿では、自然談話資料を用い、福岡市方言のアスペクトマーカにみられる言語変化について論じた。そのなかで、肯定形では伝統方言形ヨル・トルの使用が多いものの、高年層から若年層にかけて非伝統方言形テルも使用が多くなり、否定形では若年層において非伝統方言形テナイ専用へと変わりつつあることがわかった。後者の変化についてはすでに先行研究の指摘があったが、このような変化が引き起こされた要因として、本稿では、①肯定形に比べ否定形の使用が圧倒的に少ないこと、②テナイがトランの意味領域に侵入し、取って代わるという変化が起き、さらにヨル/トルの意味対立がなくなってきたところに、両者をカバーする存在としてテナイが現れたこと、の2 点を指摘した。