著者
神田 学 森脇 亮 鈴木 譲 ロート マティアス オーク ティム
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.453-462, 2000-06-30
被引用文献数
7

密集低層住宅街(世田谷)の接地境界層において, 渦相関法とシンチロメーター法を併用した乱流フラックス観測を行い, 以下の結論を得た.(1)世田谷住宅街における放射収支・熱収支解析データを提示し, その特徴を示した.(2)2高度におけるシンチロメーター計測により, 顕熱と同時にゼロ面変位を推定する手法を提案した.推定されたゼロ面変位は, 平均的にはMacDonald et al.(1998)の形態学的手法から算定された値とほぼ一致した.また, ゼロ面変位が大気安定度に依存することを指摘した.(3)渦相関法とシンチロメーター法の比較により乱流フラックスの空間代表性が検討された.シンチロメーター法のソースエリアは渦相関法のそれに対して, 不安定時で2〜3倍の広さを持つ.30分平均値での顕熱は両手法で有意な差がない.顕熱の標準偏差は大気安定度に関わらずシンチロメーター法の値が小さい.これは計測スパンの長いシンチロメーター法における渦の空間積分効果であると考えられる.