著者
大友 篤 カオリー リヤウ 阿部 隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-23, 1991-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本論文は, 1980年国勢調査の結果に基づき,日本における1979—80年の都道府県間人口移動の流出及び到着地選択過程を年齢別パターンをとおして明らかにしたもので,その概要は以下のとおりである。 流出過程に関しては, (1) 全体の流出率の空間パターンは,複雑であるが,体系的であり,流出率は,都道府県の経済機会や住宅事情ばかりでなく,出生地や住宅の所有の関係に関わる都道府県の人口構成に依存していることが示唆されること, (2) 流出率の空間パターンは,年齢にしたがって体系的に異なり,とくに都市地域で低く,農村地域で高いという最も単純なパターンをもつ15—19歳の年齢層と関わっていること,そして, (3) 流出率の年齢別パターンは,大都市地域の中心部と縁辺の農村県との間で著しく異なることが明らかになった。 到着地選択過程に関しては, (1) 東京都と大阪府は,流出超過を示すにもかかわらず,多数の県からの最も好ましい到着地であること, (2) 到着地選択過程は,年齢にしたがって体系的に異なり,とくに最も顕著な集中パターンを示す15—19歳の年齢層と関わっていること, (3) 35—39歳の年齢層は,かなり分散した到着地選択パターンを示し,この年齢層の東京と大阪の影響圏は,地方中核都市や出発地の近傍の到着地によって大きく分断されているごと,そして,(4)流出選択過程の年齢選好性は,大都市県からの移動者の場合にはかなり弱く,非大都市県からの移動者の場合にはかなり強いという,大都市地域と非大都市地域の間で,明瞭な対照を示していることが明らかになった。