著者
カパッソ カロリーナ
出版者
平安女学院大学
雑誌
平安女学院大学研究年報 = Heian Jogakuin University Journal (ISSN:1346227X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.41-53, 2019-03

12 世紀以降、西ローマ帝国の輝かしい時代が終焉してから初めて、イタリア半島は世界の文化的推進の役割を再び担うようになった。分断された小国乱立という政治状況に加えて、度重なる戦争や外敵の侵入に脅かされてはいたが、イタリア北部及び中部の都市国家、そして南部のナポリ王国は、生産と交易と社会システムの面において、飛躍的な成長を遂げた。こうした急激な変化の影響は、そのすぐ後にルネサンスと呼ばれることになる文化や芸術においてのみならず、より日常的な生活の実践に関わる分野にも及んだ。その代表的な例が料理であろう。今日、ヨーロッパで美味しいとして知られるのは、イタリア、フランス、スペインなどの料理だが、そのうちイタリアの料理は他国の料理よりもはるかに起原が古く、長い伝統を持つ。では、そのイタリア料理はいつ頃生まれたのだろうか。本論考は、イタリア半島でつくられた最初期の料理-- それが後にいわゆる「イタリア料理」を生むことになる-- について考察し、その起源と普及の状況を究明することによって、料理をめぐる当時のイタリア人の意識の変化を明らかにする。また、いくつかのレシピやそこで使用されている素材を分析し、イタリアの政治的統一よりも何世紀も前から「イタリア料理」が存在し、それがイタリア半島にすでに文化的なアイデンティティを与えていたことを明らかにしようとするものである。