著者
ガルシア G.W. マックフアーレン R.A. ラロ C.H.O. ヨンクマン T. ビプタ N. 牧田 登之
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.61-66, 2001-09
参考文献数
7

トリニダード・トバコ(ウエストインディズ)が英国から独立した1962年にコクリコは国鳥に指定されたが,1963年のハリケーンで森林の被害が甚大であったので森林の辺縁で棲みつくようになり農民から害鳥扱いされている。1980年の野生動物規制改定から保護鳥から害鳥に扱いが変わったため,コクリコ(ワキアカヒメシヤクケイ)の保存が危機的になってきている。コクリコの繁殖のために,トリニダードの動物園でのコクリコの飼育状態とトバコでコクリコを飼育している推定15名のうち5名(4ヶ所)に面接し,質問状を送った10名中の2名から返答を得たことを併せて報告する。コクリコの肉は蛋白質(24.1%)に富み脂肪が少ない(0.4%)ので健康食品として注目されている。コクリコ飼育者はすべて40歳以上の男性で趣味として飼っている。この人達は,アグーチ,ペッカリー,イグアナ等他の野生動物も飼っている。飼育中のコクリコは,動物園でもトバコの4ヶ所でも,地面や巣箱に産卵し,ふ化にも成功している。季節性はないようである。野生でコクリコが繁殖している南米本土に近いトリニダードで野生コクリコが見られず,トリニダードより北東25km離れたトバコではコクリコが土着であるのは興味深い。
著者
ガルシア G.W. バプチステ Q.S. アドグワ A.O. 加国 雅和 有嶋 和義 牧田 登之
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.55-66, 2000
参考文献数
20
被引用文献数
1 14

ヨーロッパ人が入る前には南米, 中米およびカリブ海諸国の一部ではアグーチが重要な蛋白資源であった。最近トリニダード・トバゴではアグーチを飼育繁殖して食肉その他として利用するようになっている。飼育に重要な餌付けのために, 消化器官の解剖学的知見が必要であるが, これまでの文献は, 数少なくまた, 胃, 腸など個々の部分について述べているので, 本報では全体を概観して口腔, 食道, 胃, 小腸, 大腸, 各部分の構造と長さおよび相対的重量を記載した。材料はトリニダード島南部のハンターから入手した10頭のアグーチを用いた。現場で採材後凍結し, 解剖はそれを解凍して行った。歯式は1013/(1013)=20で, 犬歯と前臼歯の間隙が広い。食道は長さ15.4cm, 直径0.5cm位で, 胃の長さは平均13.8cmであった。小腸の長さは全体で700±124cmであった。十二指腸と空腸の直径は1.4cmで回腸の直径は0.4cmであった。大腸のなかで特徴的なのは盲腸でその頭部の直径は4.2±0.8cm, 尾部の直径は2.4±0.4cmと太く, 胃よりやや小さい程度で, 盲腸の長さは平均22.5cmであった。結腸の直径は近位部は2.4±0.9cmとやや太いが遠位部は1.3±0.4cmと細くなっており, これは直腸とほぼ同じ太さである。結腸と直腸の長さは117±2.5cm。肛門腺が一対みられ, 長さ1.8〜3.0cm, 幅1.3〜1.8cm, 重さ1.3〜3.5gであった。左側の腺の方が右側よりも重い。アグーチは小腸が長いのが特徴で, 絨毛の密度の比較解剖学の材料に好適である。今後の盲腸, 肛門腺の比較解剖学的研究にも役立つであろう。