著者
沖野 哲也 後川 潤 的場 久美子 大山 文男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.71-78, 2004-09-01
参考文献数
26

中国から輸入された食用ドジョウに寄生する蠕虫類の調査を行った。その結果,線虫類の幼虫3種(Spiroxys japonica, Gnathostoma hispidum, Contracaecum sp.)と成虫1種(Pseudocapillaria tomentosa),吸虫類のメタセルカリア6種(Massaliatrema misgurni, Exorchis oviformis, Metacercaria hasegawai a, Metorchis orientalis, Encyclometra japonica, Echinostomatidae gen. sp.)と成虫1種(Allocreadium gotoi),条虫類の成虫1種(Paracaryophyllaeus gotoi),鉤頭虫類の成虫1種(Pallisentis sp.)の計13種を検出した。これらのうち,M. misgurniは国内に定着するおそれがあり注意を要する。
著者
村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.41-47, 2019-07-11 (Released:2019-09-15)
参考文献数
16

日本に初めて誕生した動物園は,フランス革命直後の1794年に開園したパリ国立自然史博物館内の植物園附属動物園(Ménagerie, le zoo du Jardin des Plantes)をモデルにしている。幕末にそこを訪れた田中芳男や福澤諭吉は,西欧文化や博物学の奥深さに驚いたことだろう。当時の動物園(メナジェリー)には,ラマルク,サンチレール,そしてキュヴィエなど,現在もなお名を馳せている学者たちが関与していた。動物園の歴史が,博物学や動物学や比較解剖学などの学術研究を基盤としている証左である。しかし,本邦の動物園は,その基盤の重要性を認識していた形跡が明治時代の文書である「博物館ノ儀」に認められるにも関わらず,上野公園に動物園が創設されて以降とくに戦後の発展過程において継承されることなく現在に至っている。国内動物園で学術研究が滞っているのは,研究環境が十分に整っていないことが原因であるのは確かだ。だが,それだけだろうか? 現今の停滞を打開するために日本の動物園関係者が必要とするのは,200年以上に及ぶ動物園における学術研究の歴史を背負い,時代に応じた新たな研究を興し,その成果を世界に向けて発信する覚悟ではないかと思う。動物園が歴史的に大切にしてきた“研究する心”を持って新たな未来を切り開くために闘い続けるべきであろう。

25 0 0 0 OA 動物園の科学

著者
村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.35-40, 2015-06-30 (Released:2018-05-04)
参考文献数
17

学会創立20年を経て動物園にアカデミックな基盤が構築されたかというと,残念ながら未だに不十分な状態にあると言わざるを得ない。この現状を打開するために『動物園学(Zoo Science)』を興す必要があると考えている。動物園学とは,動物園に関連する理系のみならず文系の学問分野を相互に連関させることで構築される総合的な学問体系である。この新たな学問領域をアカデミアに認知させ,本邦の文化として定着させることができれば,動物園が科学の場であることが当然のように受け入れられるであろう。日本の動物園を進化させるためにも,動物園における学術研究の日常的努力を怠ってはいけない。
著者
福井 大祐
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.41-48, 2013-06-01 (Released:2018-05-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1

近年,人為的な要因による野生動物の感染症の発生が問題となっており,課題の1つとして人と野生動物の関わりがあげられる。本来,人が野生動物に餌を与える必要はないが,娯楽のための餌付けから保護を目的とした給餌まで様々な目的で野生動物への餌やりが行われている。一方で,餌やりによって特定の種が局地的に集合して行動生態の改変や生物多様性の低下が起こったり,感染症の発生リスクが高まったり,生態学的健康を人為的に損なうおそれがある。例として,国際的なツル越冬地の出水でナベヅルの高病原性鳥インフルエンザ(2010年冬),旭川でスズメのサルモネラ感染症(2008~2009年冬),北海道内でカラス類における鳥ポックスウイルス感染症(2006年以降)の集団発生が認められ,それぞれ給餌,餌台,ゴミという餌やりが関わっていると考えられる。餌やりによって集合した野生動物が家畜に感染症を拡散させるリスクも問題となっている。人,家畜および野生動物の生命を支える生態学的健康を守るため,人と野生動物の関わりと感染症について,学術整理とバイオセキュリティ対策が必要である。
著者
福井 大祐
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.41-48, 2013
被引用文献数
1

<p> 近年,人為的な要因による野生動物の感染症の発生が問題となっており,課題の1つとして人と野生動物の関わりがあげられる。本来,人が野生動物に餌を与える必要はないが,娯楽のための餌付けから保護を目的とした給餌まで様々な目的で野生動物への餌やりが行われている。一方で,餌やりによって特定の種が局地的に集合して行動生態の改変や生物多様性の低下が起こったり,感染症の発生リスクが高まったり,生態学的健康を人為的に損なうおそれがある。例として,国際的なツル越冬地の出水でナベヅルの高病原性鳥インフルエンザ(2010年冬),旭川でスズメのサルモネラ感染症(2008~2009年冬),北海道内でカラス類における鳥ポックスウイルス感染症(2006年以降)の集団発生が認められ,それぞれ給餌,餌台,ゴミという餌やりが関わっていると考えられる。餌やりによって集合した野生動物が家畜に感染症を拡散させるリスクも問題となっている。人,家畜および野生動物の生命を支える生態学的健康を守るため,人と野生動物の関わりと感染症について,学術整理とバイオセキュリティ対策が必要である。</p>
著者
松尾 加代子 上津 ひろな 高島 康弘 阿部 仁一郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.35-40, 2016-06-30 (Released:2016-08-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2 7

岐阜県内で捕獲されたホンシュウジカ63頭およびニホンイノシシ30頭の筋肉について住肉胞子虫の調査を行ったところ,シスト保有率はそれぞれ95.2%および50.0%であった。ホンシュウジカおよびニホンイノシシから得られた住肉胞子虫のブラディゾイトは,いずれも馬肉の生食による住肉胞子虫性食中毒の原因とされる毒性タンパク質に対する免疫染色で陽性を示した。ニホンイノシシの筋肉からはHepatozoon sp.も検出された。分離株の18S rDNAの系統樹解析により,ホンシュウジカ由来住肉胞子虫株は遺伝的に多様で主に5つのグループに分類され,ニホンイノシシ由来のHepatozoon sp.はタイの野生イノシシ寄生マダニ由来のHepatozoon sp.と最も近縁であった。
著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.45-53, 2001 (Released:2018-05-04)
参考文献数
15

哺乳類の科以上の高次分類群に関して,その和名を検討し,リストとして表現した。目レベルでは原義を尊重しながら実際の定着度を考慮して和名を提示し,科レベルでは代表的属名のラテン語綴りを片仮名表記する方針をとった。分類体系の議論は加えていないが,従来の食虫目において,第三紀初期の化石諸群および現生するクリソクロリス類などが目として独立したため,トガリネズミ類,モグラ類,テンレック類などを無盲腸目と呼称する必要が生じていることが特筆される。また,有袋類を複数の目に分割する必要性が生じ,新たな和名を提案することとなった。近年,行政や出版界から,学校教育・社会教育の現場に影響する形で,学術的検討成果を顧みない安易な目名の変更が提案された経緯があり,本結果が哺乳類の高次分類群の和名について,学界のみならず社会的にも有意義な示唆となることを期待する。
著者
伴 和幸 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.59-64, 2018-09-28 (Released:2018-12-05)
参考文献数
24

ハズバンダリートレーニング(Husbandry Training:HT)は,単に健康管理に役立つだけではなく,研究等を円滑に実施するために利用可能である。HTは行動分析学に基づいており,侵襲性を顕著に低減でき,動物福祉に則していることから,動物園で研究を行っていく上で,その重要性が増している。国内の動物園ではHTが取り入れられてはいるものの,多くの場合一部の担当者,一部の動物種に限定されているのが現状である。大牟田市動物園ではHTを積極的に取り入れており,28種に対して,触診や皮下注射などに対してHTを行っている。そして,これらの技術について,学会発表等を行っている。さらに,HTによって得られた血液と体毛からホルモンを測定し,飼育環境を評価する共同研究を行っている。このようにHTは,動物園らしい,動物園だからこそできる研究を促進する可能性を秘めた技術といえる。一方で,HTに対して,基本的な飼育管理がおざなりになることを危惧する意見もある。HTは手段であって目的ではない。HTによって得られた情報を,研究等に役立てることで,HTが動物園本来の役割を果たすための技術の一つに成り得るだろう。
著者
木戸 伸英
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-6, 2018-03-30 (Released:2018-07-21)
参考文献数
19

私は動物園獣医師として10年程働いてきた。私の働いている環境は,特別恵まれた環境ではなく,極めて一般的な環境で,経験できる症例の数も限られるし,扱えるお金の額も多くない。しかし,そのような環境でも,いくつかの実績を論文として残すことができた。主には動物園で飼育動物の診療を行う傍らで経験した症例に関する論文と,神奈川県からの委託事業で横浜市が行っている傷病鳥獣保護事業で得た知見を論文にしたものがある。加えて,わずかではあるが,動物園で働く飼育員の論文投稿を手伝うこともできた。なぜ論文の作成にこだわるかというと,動物園では経験できる事柄が限られ,しかも過去の報告を調べても十分な情報を得られることが少ない。それ故に,論文として情報を広く公開することは非常に重要で,その情報が誰かの助けになるかもしれないし,あるいは新たな知見を得る手掛かりになるかもしれない。動物園や水族館では新たなことに挑戦する機会が多いと思うが,挑戦した事柄を論文として残し,広く知ってもらうことが大切だと考えている。こういった点で私自身は多少なりとも動物園や野生動物医学の発展に貢献できたのではないかと思っている。そして,今後もその努力を続けていきたいと考えている。
著者
村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.145-148, 2002-09
参考文献数
6

飼育下アジアゾウ(Elephas maximus)3個体の体表にゾウハジラミ(Haematomyzus elephantis)寄生を認めた。感染個体は高度の〓痒感を示し,室内の壁面や床面に体を擦り付ける行動が見られたが,これによる擦過傷や丘疹の発生は認めなかった。合成ピレスロイド系薬剤の寄生部位への局所投与には効果がなかった。カーバメイト系シャンプー剤による全身洗浄を約2か月間に5〜7回行ったところ著効が認められた。ゾウの検疫にはゾウハジラミ寄生にも注意を払う必要がある。
著者
遠藤 秀紀 山崎 剛史 森 健人 工藤 光平 小薮 大輔
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-25, 2014-03-31 (Released:2014-05-31)
参考文献数
12

ハシビロコウ(Balaeniceps rex)の咽頭腔と舌骨を三次元 CT画像解析により検討した。咽頭と頭側の食道は,左右両側へ著しく拡大していた。巨大な咽頭と頭側の食道,固定されていない柔軟な舌骨,退化した舌が観察された。これらはハシビロコウがその採餌生態に特徴的な大きな食魂を受け止めることを可能にしていると考えられた。ハシビロコウの咽頭腔領域の構造は,大きな食塊を消化管へ通過させる柔軟な憩室として機能していることが示唆された。また,舌骨,口腔,咽頭腔,頭側の食道腔に左右非対称性が観察された。この非対称性もハシビロコウが大きな魚体を嚥下することに寄与している可能性がある。
著者
川瀬 啓祐 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.65-70, 2018-09-28 (Released:2018-12-05)
参考文献数
12

大牟田市動物園では飼育管理の一部として多くの動物種を対象に体重測定,検温や採血に対してハズバンダリートレーニングを取り入れている。ハズバンダリートレーニングを取り入れることによって,これまで診察および検査に機械的保定や化学的保定が必要であった霊長類や大型ネコ科動物などにそれらの保定を行うことなく,行動的保定により採血などを行うことが可能になった。 採血により得られた血液検査値は,他園と共有することでデータの蓄積を行い,健康管理に役立てている。また,一部の動物では人工採精のトレーニングも取り入れており,動物園動物の繁殖にも寄与できる可能性がある。また,定期的な採血が可能となれば,薬剤成分の血中動態も把握することが可能であり,今後の獣医療の発展に寄与できるであろう。ハズバンダリートレーニングを取り入れると多くの知見を得る機会が増える。そういった知見をもとに多くの園館や大学との研究機関と連携,協力することが可能となれば,今後の動物園での研究や獣医療が大きく進展するだろう。
著者
田中 魁 炭山 大輔 金澤 朋子 佐藤 雪太 村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.65-71, 2019-07-11 (Released:2019-09-15)
参考文献数
32

近年,血液原虫研究分野では,形態学に加えて分子生物学的手法を用いた種分類や系統解析がなされており,特に国外におけるハト目鳥類(Columbiformes)の血液原虫研究においては,形態学的特徴を基に分類された種数をはるかに超える分子系統の存在が明らかになりつつある。しかし,国内のハト目鳥類における血液原虫の感染状況や分子系統に関する研究は未だ極めて少ない。そこで本研究では,日本国産(関東圏,沖縄,小笠原の3地域)のハト目鳥類における血液原虫の感染実態と分子系統を明らかにすることを目的とした。対象地域のハト目鳥類(4属5種3亜種173個体)における血液原虫感染率は,50.9%(88/173)であった。分子系統解析の結果,少なくとも2属2亜属5種の鳥マラリア原虫(Plasmodium spp. / Haemoproteus spp.)と,4種のLeucocytozoon属原虫が感染している可能性を示した。ハト科のLeucocytozoon属原虫は,これまで形態学的に1種のみが同定され,他の原虫属と比較しても種特異性が高いことが報告されているが,本研究において分子系統的に宿主鳥類の目間を越える原虫の伝播が生じている可能性が示唆された。本研究から得られた感染実態と分子系統解析結果は,血液原虫の分類を見直す必要性を提示し,今後も同様の継続的な監視・調査を行うことが,国内に生息する希少ハト目鳥類の保全に貢献すると考えた。
著者
西 教生
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.95-100, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

都留文科大学構内において2003年4月から2009年3月まで窓ガラスに衝突したと推測された鳥類を採集した。その結果22種43羽が採集された。例外はあるものの,窓ガラスの近くに樹木があることが衝突の要因として考えられた。シロハラについては11~1月の午前中に衝突が起こりやすいと思われた。緊急的に衝突を防ぐためには,この期間はカーテンを閉めること,バードセーバーを貼ることが対策として考えられた。
著者
望月 明義 伊藤 哲也 会田 仁 山本 和治 浅川 潔 太田 信行
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.141-144, 2016-12-22 (Released:2017-06-09)
参考文献数
10

長野県安曇野市の犀川で越冬する水鳥のうち,眼球突出を示した個体が2010年から5年間観察された。環形動物門ヒル綱に属するTheromyzon sp. がコハクチョウの腫大した眼部から採集されたが,血液が充満し,状態不良のため種は同定できなかった。水鳥がねぐらとする池において,ミズドリビル(T. tessulatum)の生息が確認されたことから,水鳥の眼球突出は本種ヒルの寄生によるものと考えられた。
著者
木戸 伸英
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.71-75, 2018-09-28 (Released:2018-12-05)
参考文献数
2

現在,日本の動物園・水族館が主体となって調査・研究を行う機会は,それ程多くないと感じている。その理由としては,研究費や人手不足等様々な問題があるだろうが,最も大きな原因はノウハウが不足している,という点にあると思う。本稿では筆者が動物園で勤務しながら行ってきた次の五つの調査・研究活動の手法(①目的を持つ,②データを集める,③データを整理して方向付けする,④結果の意味を考える,⑤口頭発表・論文発表を行う)を紹介することで,将来動物園・水族館での調査・研究活動の活性化に寄与できればと期待している。動物園・水族館で調査・研究を行う事は,得られた知見を社会に還元する意義と共に,働く職員のスキルアップ,あるいは専門性を高めるためにも有益であると考える。今後多くの方々が積極的に調査・研究活動に取り組んで頂ければ幸いである。
著者
川瀬 啓祐 木村 藍 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-14, 2018-03-30 (Released:2018-07-21)
参考文献数
31

ツキノワグマUrsus thibetanus,キリンGiraffa camelopardalis ssp.,トラPanthera tigris ssp.,ライオンPanthera leo 2個体,サバンナモンキーChlorocebus aethiops,マンドリルMandrillus sphinxの6種7個体に対してハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定により定期的に採血を行い,血液学検査値および血液生化学検査値を得た。得られた血液検査値を既報と比較したところ,少なくともツキノワグマ,キリン,マンドリルにおいては,ハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定による採血はストレスが少ないと推察された。本報告は日本国内において,上記の動物種における行動的保定で得られた血液検査値の初めての報告である。また,定期採血が可能となることで,各個体の健常値を得ることができ今後の飼育管理や健康管理に役立つものと考えられる。
著者
進藤 順治 吉田 直幸
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.23-26, 2001-03

新潟市水族館で飼育されている10羽のオスのフンボルトペンギンの精液量と精子濃度を1年間測定した。フンボルトペンギンの精液は7月から8月中旬の換羽期以外は,高い割合で採取することができた。精液量は一年を通し0.02mlから0.04mlの間で推移していた。平均精液量は0.026±0.009mlであった。精子濃度は10月から2月の間は高い値で推移し,一方換羽期間は著しく低下していた。平均精子濃度は21.9±11.2 10^8/mlであった。今回の結果から,最も繁殖に適した時期は晩秋から早春にかけてであると思われた。
著者
遠藤 秀紀 林 良博 山際 大志郎 鯉江 洋 山谷 吉樹 木村 順平
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-76, 2000-03
被引用文献数
1

太平洋戦争中の東京都によるいわゆる猛獣処分によって, 3頭のアジアゾウが殺処分となったことは, よく知られている。これら3頭のゾウに関しては, 東京大学や国立科学博物館などに遺体の一部が残されている可能性が示唆されていた。本研究では, 3頭のアジアゾウの遺体に関し, 文献と聞き取り調査を行うとともに, 関連が疑われる東京大学農学部収蔵の下顎骨に関しては, X線撮影による年齢査定を進めて処分個体との異同を検討した。その結果, 東京大学農学部に残された下顎骨は他個体のものである可能性が強く, 戦後発掘され国立科学博物館に移送された部分骨は標本化されなかったことが明らかになった。したがって, 東京都恩賜上野動物園に残る雄の切歯を除き, 該当する3頭の遺体は後世に残されることがなかったと判断された。また遺体から残された形態学的研究成果は, 剖検現場の懸命の努力を物語っていたが, 研究水準はけっして高いとはいえず, 十分な歴史的評価を与えることはできなかった。