- 著者
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山口 英美
長 雄一
貞國 利夫
- 出版者
- 日本野生動物医学会
- 雑誌
- 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.1-7, 2020-03-31 (Released:2020-05-31)
- 参考文献数
- 31
2018年4月から2019年3月までの間,北海道東部において,ハシブトガラス,ハシボソガラスが利用するねぐら,就塒前集合場所における落下糞及びペリットを用いて,サルモネラ感染状況と食性の季節変化を調査した。落下糞1158検体を用いた培養検査により,25検体(2.2%)からサルモネラが検出され,血清型はAgona,Braenderup,Derby,Kentucky,Muenster,O4:i:-およびTyphimuriumであった。Kentucky3株およびO4:i:-1株が複数の抗生物質に耐性を示した。ねぐらにおけるサルモネラ検出率は,4~6月(0/246,0.0%)より9~11月(8/300,2.7%)が高く,カラスにおけるサルモネラ保有状況に季節変化があることが示唆された。これは,免疫機能が幼弱で易感染性と思われる当歳個体が初夏に巣立ち,7月以降にねぐらに参加し始めたことが影響したと考えられた。また,9~11月に検出されたAgona13株のパルスフィールドゲル電気泳動パターンは全て同一であり,特定の株が今回調査したカラス群内で感染を拡大させていた可能性が示された。ペリットを用いた食性解析の結果,全ての季節で家畜飼料の摂食が認められたことから,年間を通じてカラスが畜産環境に侵入し,畜産農場間のサルモネラ伝播に関与しうることが示唆された。