著者
中野 元太 矢守 克也 クラウ ルイザ
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-38, 2022-05-31 (Released:2023-07-31)
参考文献数
24

ソフトな介入・干渉によって行動変容を促すナッジ論を生産的に防災・避難領域に導入するための方策を提案することが本研究の目的である。ナッジ論は,その概念を突き詰めれば,縦軸に「合理的・意識的人間モデル/本能的・反射的人間モデル」という二項対立軸を置き,横軸に「選択の強制/選択の自由」という二項対立軸を置いた概念図により整理可能である。概念図上方が合理的な選択に基づくジャッジ領域とし,下方をヒューリスティックな選択に基づくナッジ領域と位置づけた。同概念図に基づいて,現在の防災・避難対策をジャッジ領域とナッジ領域とで概観した。その上で,ナッジ論を用いることの批判等も検討しながら,ナッジの有効な活用のためには,介入者と行為当事者との合意形成や,ナッジ領域とジャッジ領域との間の相互利用が重要であることを指摘した。