著者
志柿 浩一郎 クリスティン ウインスカウスキー
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.61-85, 2021

本論文の目的は、1920年代の第一波フェミニズム運動と1960年代の第二波フェミニズム運動の間に、女性の社会進出に対する人々の意識やジェンダー観を変えた、小さな社会変革があったことを示すことである。また、本稿では、第一波と第二波フェミニズム運動という見方あるいは歴史的括りが、より顕著な社会改善にもつながった重要な史実を覆い隠している可能性があることを3つのケースを取り上げて検証した。特に、アメリカン・コミックのワンダーウーマンの創作背景、FCCにおけるフリーダ・ヘノックの仕事、および1940年代から50年代にかけて起きた大衆文化や消費者文化を巻き込んだマッカーデルの服飾デザインの、3つのサンプルケースを用いて実証した。これらの事例を振り返ってみると、第一波や第二波の間に起きていた小さな変革がフェミニズム運動の一端を担っていた。ワンダーウーマンの歴史背景やフリーダ・ヘノックの市民活動、マッカーデルの事例などは、フェミニストやマイノリティの活動と直接結びつくことは難しいかもしれない。なぜなら、これらの事例は、大きな変化をもたらしたり、他の非政治的な手段で人権を獲得したりするような政治的な運動に直接関係するものではなかったからである。しかしながら、これらの事例とその歴史を俯瞰すると、これらの事例は、大衆文化や消費者文化に影響を与えた、ローカルあるいは専門的な領域で活動している個人による小さな社会運動であったことが明らかとなる。