- 著者
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ゲプハルト ヒールシャー
- 出版者
- 大東文化大学
- 雑誌
- 国際比較政治研究 (ISSN:09189092)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.54-67, 124-127, 2007-03
日本は、明治維新以来、欧米諸国を参考に近代化を進め、政治、経済、社会、文化などあらゆる分野で影響を受けている。これらの影響の一部は意図的に取り込まれ、又、その他は、そのものの力により、自然に入ってきた。第2次世界大戦の後、米国の占領政策によって、日本は改めて大きく変わった。多くの変革は、サンフランシスコ条約により、日本が主権を取り戻してからも続いている。アメリカの原案による、今まで一度も改正されたことのない現在の憲法は、その一例である。日本の現状は、日本本来のものと、アメリカ、ヨーロッパの要素の混合である。安倍晋三率いる新政府は、改憲と教育基本法の改革により、日本に固有のアイデンティティを与えようとしている。又、新政府は、最近問題になっている貧富の格差を是正しようとしている。この問題の解答を求めて、多くの日本人が、再び欧米に目を向けている。デーゼ1: 「アメリカ式」憲法以外の法律制度の多くが、大陸ヨーロッパやスカンジナヴィアに準じている。社会保障制度についても同じである。国や公共のシステムも、どちらかというと、ヨーロッパ型が期待されている。テーゼ2: 1945年以降の6・3・3の学校制度は、国民に、表面的には本家のアメリカを凌ぐ一般教養の標準化をもたらした。そのことでは昔ながらの出生による(階級的な)教育制度の分離に悩むヨーロッパの国々も日本をうらやんでいる。対するに、日本の大学は、例外はあるにしろ、その高い授業料に見合う水準にはなく、アメリカやヨーロッパの良い(といわれる)大学に及ばない。これは、日本人がエリートを作ることを嫌う風土にも関係があろう。テーゼ3: 政治分野では、大統領制をとるアメリカは、議会制民主主義による内閣制度を持つ日本には参考にならない。ヨーロッパの国々の政治制度も、それぞれ大きく違っているので、一つのヨーロッパ式のモデルも存在しない。フランスは日本と同じ中央集権国家ではあるが、日本と異なり、強大な力を持つ大統領が存在する。ドイツは連邦制をとっているが、日本の首相と比較しうる、強力な首相が居り、大統領の力は、それほど大きくない。