著者
今永 清二 ウンガムニサイ ノム ウオルカウイン カウイ コンチャナ プラップルン ファルーク オマール WORRAKAWIN Kawee KONGCANA Plubplung コンチャナ ブラップルン ノム ウンガムニサイ カウイ ウオルカウイン ブラップルン コンチャナ アルン チャウジェン ブラッブルン コンチャナ 利光 正文
出版者
広島女子大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

東北タイとラオスのイスラム共同体の成立時期は約100年前と推定され、主としてパキスタン人、インド人ムスリムの移住により成立したものである。この地域のムスリムは商業、牛の飼育、牛肉販売に従事している。なお、東北タイとラオスには各1ヵ所のチャム人のイスラム共同体があり、これはカンボジアから移住してきたチャム人の共同体である。以上のムスリムはスンナ派であるが、ラオスのインド人イスラム共同体の場合は、カ-ディリ-教団のス-フィズムの名残りを色濃くとどめていて、注目される。カンボジアのイスラム共同体の殆どはチャム人の共同体である。現在のベトナム中・南部にチャンバ王国を建てたチャム人は、北の強国ベトナムの侵略を受け、15世紀後半、17世紀末、19世紀初の3期を画してカンボジアに移住してきた。今日、チャム人ムスリムはカンボジア政府の民族政策によって「クメール・イスラム」と総称されているが、実際にはジャフド、チャム、チャム・ジュバの3類型に分類することができる。ジャフドとチャムは、チャム語を母語とするムスリムであるが、チャム・ジュバは、14、5世紀頃カンボジアに移住していたジャワ人やマレー人とチャム人とが混血し、文化的にも同化していって形成されたムスリムである。彼らはクメール語を日常語とし、またマレー語やマレー文化に親近感をもつムスリムである。これらチャム人ムスリムは、メコン川やトンレサップ湖の漁業に従事している。コンポン・チュナンやシェムリアップにおいては、川の中のモスクや浮船のスラウを中心に水上生活を営むチャム人ムスリムの調査を行い、イスラムの地域的特色と多様性を明らかにすることができた。