著者
ゴラム サルワル A.K.M. 高橋 英樹
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.87-104, 2007-12-31
被引用文献数
1

スノキ属協Vacciniumの花粉形態研究に続き,本属が所属するスノキ連に含まれる他の22属59種の花粉形態を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察し,スノキ連全体で見られる花粉四集粒の形態的多様性を要約した.スノキ属の花粉で見られた溝間極域の外壁模様の7型(1〜7型)・12亜型に加えて,新しい1つの型(8型:アガペテス・ブラクテアータ)と5型の中に2つの新亜型を認めた.ディモルファアンテラ属での結果は,スノキ連における属の単系統性同定のために外壁表面模様が最も有用な花粉形態形質であることを示した.アガペテス属の外壁模様はスノキ属に近縁であることを支持したが,アガペテス・ブラクテアータを除けば,アガペテス属がスノキ属に含まれるという可能性をも示すものだった.コステラ・エンデルティイの外壁模様(7型)はスノキ属のポリコディウム節に含まれる唯一の種ワッキニウム・スタミネウムに大変よく似ていた.遺伝子系統であるアンデアン・クレードの2つの主要なサブクレードへの分割は,花粉形態からは支持できなかった.しかしマクレアニア属の単系統性は支持できそうである.先行研究が示していたように,花粉形態形質はカウェンディシア属とサティリア属の姉妹系統関係を支持し,チバウディア属には少なくとも2つの明瞭な群があることも示した.ゲイルッサキア属とスノキ属との近縁性も花粉形態研究は支持した.
著者
ゴラム サルワル A. K. M. 伊藤 利章 高橋 英樹
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-34, 2006-06-30
被引用文献数
3

光学顕微鏡(LM)・走査型電子顕微鏡(SEM)・透過型電子顕微鏡(TEM)により,スノキ属Vaccinium内に認められている30節のうち18節,合計37種の花粉形態を観察し,本属花粉形態の多様性の概要を明らかにした.SEMによる花粉の溝間極域の外壁模様とLMによる花粉形態計測値の類似性を基にして,各種が置かれている属内分類体系について評価した.四集粒花粉の溝間極域の外壁表面模様は,種類により微細いぼ状模様〜しわ状模様〜平滑模様と変異し,しわ状模様単位にはさらに「二次的な模様」:不明瞭〜微細で明瞭な縞模様があり,縞模様単位は更にビーズ状にくびれているものがあった.外壁模様は大きく7型に分けられ,1-3型はさらに12亜型に分けられた.花粉形態形質はスノキ属内で現在認められている節分類と明瞭に連関している訳ではなかったが,類縁関係に有意義な情報を与え,属内の分類学的な問題にも新しい見方を与えてくれた.アクシバ節のアクシバ花粉ははっきりした微細いぼ状模様(6型)を持ち花粉サイズも本属では最小であり,花粉形態形質は本種をスノキ属から分類する考えを支持する.地理分布と対応した四集粒サイズと花粉外壁模様の若干の差違が認められた.一般的に新世界産スノキ属種は花粉サイズが大きく,外壁模様は粗しわ状模様〜粗しわ状-平滑模様とまとまっている.一方で,旧大陸産種はサイズがより小さい傾向があり,外壁模様は微細いぼ状模様〜しわ状模様〜平滑模様とより広い変異を示す.