著者
脇山 義史 恩田 裕一 ゴロソフ ヴァレンティン コノプレフ アレクセイ 五十嵐 康記 高瀬 つぎ子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

浜通り北部を流れる新田川では、原発事故により上流域に比較的多量の137Csが沈着した。一方で、その下流域には市街地や農地が存在するため、この河川を通じた137Csの移動を把握することは地域住民の安全を担保するうえで重要な課題である。本報告では、新田川流域における137Cs動態の把握を目的として行った、浮遊土砂の137Cs濃度変化の観測結果を示す。観測は支流である比曽川(蕨平地点)、新田川上流(野手上北地点)、新田川下流(鮭川橋地点)に浮遊土砂サンプラーを設置して2014年7月から行っている。観測初期(2014年7~12月)の浮遊土砂の137Cs濃度は、それぞれ28.3、13.4, 17.5 kBq kg-1であったのに対して、2017年後半(2017年5月~10月)には、それぞれ11.9、6.8、5.9 kBq kg-1まで低下していた。137Cs濃度の時間変化傾向は、事故からの経過時間を変数とする指数関数によってあらわされた。これらの137Cs濃度の時間変化を表す式によって推定される値と実測の137Cs濃度の差は、浮遊土砂のFe2O3の割合が高いほど大きいという傾向が見られた。さらに、2016年8月、2017年10月の台風接近時に野手上北において採取した浮遊土砂の137Cs濃度は、水位上昇時において水位低下時により高いという結果が得られた。一方で、2016年8月の台風時に下流域の新田橋地点で採取した浮遊土砂の137Cs濃度は水位のピーク時に最も高い値を示した。これらの結果は土砂の供給源の違いが浮遊土砂サンプラーによる各観測期間の137Cs濃度変動に影響していることを示唆している。今後、浮遊土砂の粒径や元素組成の測定結果を踏まえて、137Cs流出プロセスを考察する予定である。