著者
サハ ウタムクマール ハイ モハマドアブドゥル ハイダー ジャミル サハ ルパラニ
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.168-176, 1997

ジャガイモ (<I>Solanum tuberosum</I>L.) の栽培において, 灌漑条件と稲わらマルチの有無の影響について試験を行った.供試品種はCardinalを用い, バングラディシュのPlinthic Paleustult土壌で試験した.灌漑区は, 土壌有効水分損失 (DASM) を20, 40, 60%に設定した灌漑条件とし, さらに対照区として無灌漑区を設けた.この結果, 試験地域の土壌, 気候条件下において目標の高収量に達するためには, 灌漑したジャガイモ畑の土壌有効水分 (ASM) の損失許容限界量が20~40%であることを確認した.このASM限界量の維持には, 生育期間中, 稲わらマルチ処理区で4~5回, 無処理区で6~7回の灌漑が必要であった.これは, 稲わらマルチ処理により土壌水分が保持されるため, 生育期問中2回の灌漑を節約できたことを示している.さらに, 稲わらマルチ処理区と無処理区のジャガイモ収量に及ぼす種々の灌漑条件の平均的な影響を比較すると, 稲わらマルチ処理は収量を4t/ha以上増加させることが判明した.試験地において最も生産量の多かったジャガイモの水分総使用量は200~216mmの範囲内と見積もられ, また厚さ15cmの稲わらマルチを用いることにより土壌水分の蒸発量を最少に抑え, 総水分使用量を137~146mmまで減らすことができた.より頻繁な灌漑はASMの損失を抑えてジャガイモの水分利用効率を高めたが, これは稲わらマルチ被覆によってさらに改善された.稲わらマルチ被覆下でのより頻繁な灌漑で, 小型の塊茎の割合は減少し大型の塊茎の割合は増加するという塊茎サイズの分布傾向と収量の増加が確認された.