著者
サルミン アントン
出版者
Japanese Society for Slavic and East European Studies
雑誌
Japanese Slavic and East European studies
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-104, 2014

チュヴァシの先祖はサビール人またはスヴァール人と呼ばれる人たちであったという意見が広く認められるところになっている。この説は議論の余地のあるところではあるが、これは歴史的・文献学的調査によって十分に根拠が与えられている。研究者はサビール人が南西シベリア出身だと考えている。チュヴァシの先祖はカフカス時代にはしばしばフン族、すなわちいわゆるサビールあるいはフン・サビールの一族と呼ばれていた。サビール人はハザール人形成のための重要な部分をなしていた。サビール人の一部はアルメニア人と同化した。カフカス時代(2-9世紀)にはサビール人は野生動物の狩猟を生業とし、家畜や魚の肉を食していた。922年はチュヴァシの先祖がその祖国の三度目の獲得をした年だと見なすべきである。最初の祖国はシビールという町を中心とするトボル河沿岸地方、二つ目はヴァラチャンという町を中心とするハザール汗国の一部、三つ目がチェレムシャー地方、すなわち現在のチュヴァシ共和国の南部地方およびウリャノフ州の北部である。その中心はどうやらチガシという町だと見なすべきであるようだ。922年から1469年の間の期間はチュヴァシ人が民族的自覚を形成し、確立した時代となっている。