著者
下地 和宏 シモジ カズヒロ
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-30, 2020-01

日本の神社には鳥居、狛犬、灯籠、拝殿、神殿などの付属施設が建設されている。沖縄の宮古の御嶽の奥中央にはイビ(威部)と呼ばれる御神体の石が安置され、神が鎮座すると考えられている。他に複数のイビがある。これは遙拝の神である。イビ手前の広場が神庭であり、ここに祭祀のために籠る祭祀小屋が設けられている。宮古には800余の御嶽があるといわれる。多くの御嶽は神社風に施設が建設され変化しているが、厳かなる場所に変わりはない。 「琉球併合」後の沖縄の近代化は、「忠君愛国」の教育とともに歩んできた。「教育勅語」の暗唱、「御真影」への最敬礼、宮城遙拝、天皇陛下万歳三唱などを強制されてきた。いわゆる「皇民化教育」の洗礼を受けた人々が、日本への「同化」に向けて、多くの住民が参詣する由緒ある御嶽の「神社化」を図った。鳥居、灯籠を建立、籠り屋を拝殿に、イビを神殿に改築し神社風に変えた。とりわけ鳥居は御嶽(神社)への入り口として象徴的に扱われた。鳥居建立の風潮は戦後も引きずることになる。むしろ拡大し、御嶽に神社と表記する地域も見られる。今や鳥居は違和感なく御嶽に建立されている。老朽化した神明系の鳥居は明神系に再建される傾向にある。招待論文