著者
張 兵 シラジ M.N. 蓮池 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.311, pp.37-42, 2002-09-12
被引用文献数
1

携帯端末の普及や無線通信技術の発達に伴い、無線環境に対応したTCPに関する研究は注目されている。従来のTCPは無線の高い誤り率によるパケットロスを輻輳によるロスと区別できないため、輻輳状態にないにも係らず不必要にデータの送信速度を抑制するという問題があった。この問題を解決するため、無線リンクロスを明示的に通知するEWLN(Explicit Wireless Loss Notification)が提案されている。しかし、本手法の実現にあたり、基地局を利用して、wireles-to-wiredの片側通信を対象にするのが殆どで、wired-to-wireless通信、特に物理層ならびにデータリンク層にエラー訂正技術や再送技術を適用した場合においてその実装方法が明確ではなかった。そこで、本研究ではリンク層の再送を終えてなおビット誤りにより破棄されたIPパケットに対して、そのパケット情報をTCP層に通知するEWLNの実現方式を提案する。本方式は基地局に余計な負荷を掛けないうえ、無線リンクロスを完全にTCP層に通知することにより、不必要な送信速度の抑制を解消するとともに、無線リンクエラーによるパケットロスを直ちに再送することを実現できる。それにより、無線環境におけるTCPの性能を大幅に向上することができ、基地局のない無線アドホックネットワークにおいても本方式を容易に適用することができる。さらに、提案方式の有効性を検証するため、無線電波環境において、特にSINRを指標として電波環境が変化している場合において、提案方式の性能評価を行った。