著者
高橋 碧 セーリム ナッタウット 林 晋平 佐伯 元司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1040-1050, 2019-04-15

大規模なソフトウェア開発では,ある特定のバグを解決するために修正すべきソースコード箇所を見つけるBug Localizationが必要である.情報検索に基づくBug Localization手法(IR手法)は,バグに関して記述されたバグレポートとソースコード内のモジュールとのテキスト類似度を計算し,これに基づき修正すべきモジュールを特定する.しかし,この手法は各モジュールのバグ含有可能性を考慮していないため精度が低い.本論文では,ソースコード内のモジュールのバグ含有可能性として不吉な臭いを用い,これを既存のIR手法と組み合わせたBug Localization手法を提案する.提案手法では,不吉な臭いの深刻度と,ベクトル空間モデルに基づくテキスト類似度を統合した新しい評価値を定義している.これは深刻度の高い不吉な臭いとバグレポートとの高いテキスト類似性の両方を持つモジュールを上位に位置付け,バグを解決するために修正すべきモジュールを予測する.4つのOSSプロジェクトの過去のバグレポートを用いた評価では,いずれのプロジェクト,モジュール粒度においても提案手法の精度が既存のIR手法を上回り,クラスレベルとメソッドレベルでそれぞれ平均22%,137%の向上がみられた.また,不吉な臭いがBug Localizationに与える影響について調査を行った.