著者
チャールズ・ユウジ ホリオカ
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2017-12, pp.1-12, 2017-05

本稿では,家計の貯蓄行動を例として取り上げ,日本人は特殊であるか否かについて吟味する。より具体的には,(1)日本人は経済合理性に基づいて行動するか否か,(2)日本人の行動は国民性・社会規範などにも影響されるか否かについて検証する。日本人は貯蓄好きな国民であると良くいわれ,そういった国民性・社会規範はそう簡単には変わらないと考えた場合,日本の家計の貯蓄行動が主に国民性・社会規範によって決まっているのであれば,日本の家計貯蓄率は絶対的にも,他の国と比較しても,高い水準で安定しているはずである。しかし,日本のこれまでの家計貯蓄率の時間的推移をみてみると,日本の家計貯蓄率は非常に不安定であり,低いことが多く,またマイナスになることもあった。したがって,本稿の分析結果は,日本の家計貯蓄率の主な決定要因は国民性・社会規範ではないということを示唆する。加えて,日本の家計貯蓄率が過去において高かったこと,また近年減少していることの両方を様々な人口学的要因・経済社会的要因によって説明することができるという本稿の分析結果も,日本の家計の貯蓄行動が経済合理性に基づくものであり,必ずしも国民性・社会規範によって決まっているものではないということを示唆する。しかし,社会規範が家計貯蓄行動に限定的ではあるが影響を及ぼすという研究結果も報告されており,社会規範の重要性を完全に排除することはできない。
著者
チャールズ・ユウジ ホリオカ Charles Yuji Horioka
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1-15, 2014-11

経済学者は通常,人間は利己的であると仮定するが,人間は実際に利己的なのだろうか,それとも利他的なのだろうか。また,利己的な人の割合と利他的な人の割合は国によって異なるのだろうか。本稿の目的は中国,インド,日本,アメリカで実施されたアンケート調査からの遺産行動(遺産動機・遺産の分配方法)に関するデータを紹介し,そうすることによって,これらの国においてどの家計行動に関する理論モデルが成り立っているかを明らかにすることである。本稿の分析結果によると,遺産行動は国によって大きく異なり,アメリカ人とインド人の遺産行動は日本人と中国人のそれよりもはるかに利他的であり,逆に日本人と中国人の遺産行動はアメリカ人とインド人のそれよりもはるかに利己的であるようである。また,この国同士の違いは,ある程度,国同士の社会保障制度,社会的規範などのような外的要因の違いによるものであり,ある程度,国同士の家計の選好の違いによるものであり,後者は国同士の宗教心の強さの違いによる可能性が高い。
著者
チャールズ・ユウジ ホリオカ
出版者
日本経済国際共同センター
巻号頁・発行日
2002-04

大塚啓二郎, 中山幹夫, 福田慎一, 本多佑三編. 現代経済学の潮流2002. 東洋経済新報社, 2002, p. 23-45.