著者
チョウ ヨンマン 今井 俊夫 高見 成昭 西川 秋佳
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.35, pp.178, 2008

【目的】Zucker fattyラットは突然変異レプチン受容体遺伝子faのホモ接合体(<I>fa/fa</I>)で、若齢期から著しい肥満を呈し、単純性肥満/糖尿病モデルとして用いられている。一方、ヘテロ接合体(<I>Fa/fa</I>)及び野生型(<I>Fa/Fa</I>)のZucker leanラットは肥満にならないことから、ホモ接合体の対照として用いられているが、その生理学的/解剖学的な違いについての詳細は明らかではない。今回、Zuckerラットが乳腺発がんモデルとして応用可能か否かを検討する目的で、各遺伝子型動物の血清生化学的検査及び肝臓/乳腺/脂肪組織の組織学的検査を実施した。【材料と方法】6-7週齢の各遺伝子型の雌ラットあるいは10%コーン油添加飼料で5週間飼育した<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>雌ラットを対象とした。【結果】血清総コレステロール、インスリン及びレプチン濃度は、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>に比し<I>fa/fa</I>では有意に(p<0.05)高値を示した。中性脂肪及び血糖値には遺伝子型間の明らかな差はみられなかった。組織学的には、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>に比し<I>fa/fa</I>では乳腺組織の発達が著しく乏しく、脂肪組織においては細胞肥大が認められた。<I>Fa/fa</I>と<I>Fa/Fa</I>の比較において、基礎飼料飼育下では主な血清生化学値に明らかな差はみられなかったが、10%コーン油飼料を与えることにより、<I>Fa/fa</I>ではHDL-コレステロール値は僅かながら有意に(p<0.05)低下したのに対し、<I>Fa/Fa</I>では変化を示さなかった。<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>のいずれにおいても、コーン油を与えることによる肝臓/乳腺/脂肪組織の組織学的変化はみられなかった。【結論】<I>fa/fa</I>は乳腺発がんモデルへの応用には適さないが、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>は脂肪負荷により脂質代謝と乳腺発がんとの関連性を解析するモデルとしての応用が可能であることが示唆された。