著者
福岡 鮎美 藤井 悦子 唐澤 弥生 堤 秀樹 伊藤 恒夫 鈴木 雅実 杉本 哲朗
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.32, pp.129, 2005

生体に存在するタンパク質の多くは糖鎖を持つ糖タンパクであり、腎臓においては尿細管、糸球体の各細胞で糖鎖の種類と分布が異なることが知られている。レクチンは特定の糖鎖を認識する物質であり、組織中のレクチン結合性によって各種糖鎖の分布が検索可能である。近年、ミニブタは実験動物として安全性評価に用いられつつあるが、ブタ腎臓におけるレクチン結合性の報告はわずかにみられるものの、ミニブタにおける報告はない。そこで今回、Göttingen系ミニブタの腎臓における各種レクチンの結合性を検索した。Göttingen系ミニブタの雄(40週齢,ならびに260週齢)を使用した。腎臓の20%中性緩衝ホルマリン液固定・パラフィン標本を作製し、Lotus Tetragonolobus Lectin(LTL)、Ulex Europaeus Agglutinin I(UEA I)、Peanut Agglutinin (PNA)、Concanavalin A (Con A)、Dolichos Biflorus Agglutinin (DBA)、Ricinus Communis Agglutinin I (RCA I)、Soybean Agglutinin (SBA)、Wheat Germ Agglutinin (WGA)およびMaackia Amurensis Lectin I (MAL I)を用いたレクチン組織化学的検索を行った。尿細管では、近位尿細管がLTL, UEA I, ConA, DBA, RCA I, SBA, WGA, MAL Iに陽性を、中間尿細管(ヘンレループの一部)が全てのレクチンに陽性を、遠位尿細管がUEA I, PNA, ConA, RCA I, SBA, WGA, MAL Iに陽性を、集合管がUEA I, PNA, ConA, RCA I, SBA, WGA, MAL Iに陽性をそれぞれ示した。糸球体では、ボウマン嚢上皮がPNA, ConA, DBA, RCA I, WGAに、血管内皮がConA, DBA, RCA I, SBA, WGAに陽性を示した。メサンギウム細胞はConAで弱陽性を示した他は陰性であった。各組織のレクチン反応性に、週齢による差は認められなかった。以上、Göttingen系ミニブタにおいてもレクチンによる糖鎖の解析が可能であり、腎臓における糖鎖の解析は各細胞(尿細管の区分など)のマーカーとしての利用や、糖鎖分布からの機能解析に応用できるものと考えられた。
著者
小野寺 博志 佐神 文郎
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.33, pp.44, 2006

「有用で安全な医薬品をより早く必要とする患者さんに届ける」ことは創薬に携わるヒトの目的でもあり使命と考える。新薬を開発する過程で初めてヒトに投与する場合に重要なのは安全性の確保である。そのために必要な非臨床試験の種類や実施時期については種々のガイドラインや通知がなされている。しかしながらそれらガイドラインは時代と共に改訂や追加を行っているが現在の全ての医薬品について有用な情報を得るには限度がある。特に新しい科学や技術で開発された、あるは今後開発されるであろう医薬品については問題が多い。本ワークショップでは始めに現行のガイドラインや通知の目的や内容が、安全性を確認する試験としての要点を述べる。続いて安全性を評価している立場からガイドラインに沿って行われた非臨床毒性試験で実際に問題となる事例や必要な情報とは何かについて考えてみたい。もちろん共通の考え方も含まれるが、全ての医薬品に適応するとは限らず現時点ではCase by case で対応することになる。<BR> 実際に新しい科学・技術を駆使した医薬品の開発を行っている立場から現在の状況と今後の動向について中澤先生から紹介いただき問題点や方向性を考えてみたい。川西先生からは今後主流となると思われるバイオ医薬品について研究サイドからの新しい生体メカニズムの発見や解析が創薬、毒性以外からの安全性評価について紹介いただきます。続いて小野先生からは医薬品の直接の毒性学とは違った方向から医薬品の安全性についての現状や考え方についてお話いただけると思います。<BR> 結論を出すのは困難ですが、今後の新しい医薬品の非臨床安全性評価のあり方について問題提起する場としたい。
著者
平澤 由貴 倉田 昌明 中島 実千代 坂本 憲吾 小田部 耕二 佐藤 伸一 野村 護
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.38, pp.20157, 2011

【目的】一般毒性試験における血液凝固系検査では,血小板数,PT,APTT及びフィブリノーゲン(Fbg)がルーチンに測定されるが,これらの項目だけでは血小板機能や線溶系の異常は検出できない.薬物の血液凝固系への統合的な評価には,これらの測定を補足する必要がある.今回,ヒトに類似する実験動物であるカニクイザルについて,血小板機能検査である血小板凝集能,また血管異常も含め凝固異常を総合的に評価できる出血時間,FDPについて測定したので報告する.また,ルーチン項目に関し,産地間差(フィリピン,中国,ベトナム,インドネシア)も含め基礎的に検討した.【方法】(1)出血時間:市販の注射針を一定の深さに穿刺できるように加工して,穿刺器具とした.無麻酔下で尾背部を穿刺部位とした.湧出血を一定間隔で濾紙に吸い取り,吸着血痕が1mm以下となった時間をエンドポイントの出血時間とした.(2)血小板凝集能:無麻酔下に大腿静脈からクエン酸加採血し,遠心分離(200×g)して多血小板血漿(PRP)を分取し,さらに遠心分離(2000×g)し乏血小板血漿(PPP)を分取した.PRPの血小板数が約35×10<SUP>4</SUP>/μLになるようにPPPで希釈調製した.凝集誘発剤はADP 5,20 μmol/L及びコラーゲン3 μg/mL(いずれも最終濃度)を用い,光透過法により凝集率を測定した.(3)その他のルーチン項目(血小板数,PT,APTT,Fbg)は自動分析装置,FDPは用手法にて測定した.【結果】(1)出血時間:出血時間は1~3.5分であった.2回の繰返し穿刺でも出血時間に差はなかった.今回の方法では,穿刺傷は小さく出血量も限られており,生体に対する侵襲性は小さいと考えられた.(2)血小板凝集能:最大凝集率はADP 5 μmol/Lで約63%,ADP 20 μmol/Lで約75%,コラーゲン3 μg/mLで約75%あった.また,ADP 20 μmol/Lで誘発した凝集の日内と日差変動に大きな変動はなかった.(3)血小板数,PT及びAPTTに産地による大きな違いはみられなかった.【結論】ルーチンの血液凝固系検査項目に加えて,血小板凝集能(ADP,コラーゲン凝集)及び出血時間について基礎的なデータを得ることができた.これらの検査は侵襲性が小さく,さらに線溶系検査を組み合わせることで,一般毒性試験でより詳細かつ統合的な血液凝固異常の評価が可能である.
著者
首藤 康文 福山 朋季 藤江 秀彰 小嶋 五百合 富田 真理子 小坂 忠司 原田 孝則
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4151, 2009

パラチオン(P)とメタミドホス(M)、2種の有機リン剤を2週間にわたり雌性ラットに反復経口投与し、一般毒性、神経毒性および免疫毒性関連項目を指標に複合曝露影響を検索した。<BR>供試動物:8 週齢のWistar Hannover系雌ラット 8匹/群<BR>実験群:溶媒対照群(コーンオイルと1% Tween80の1:1混合乳化液)、パラチオン単剤投与群(P0.6 mg/kg)、メタミドホス単剤投与群(M0.8 mg/kg)、複合投与群(P0.6 mg/kg+M0.2 mg/kg、P0.6 mg/kg+M0.4 mg/kg、P0.6 mg/kg+M0.8 mg/kg)の計6群<BR>投与方法:胃ゾンデを用いた14日間反復強制経口投与<BR>検査項目:一般毒性(体重、一般状態、血液・生化学的検査)、神経毒性(神経症状、瞳孔径、自発運動量、高架式十字迷路検査、脳重量、血漿および脳コリンエステラーゼ(ChE)活性測定)および免疫毒性関連項目(胸腺の細胞数測定およびフローサイトメータを用いたリンパ球サブセット解析)<BR>結果・考察:一般毒性指標および免疫毒性指標に変化は認められなかった。神経毒性学的検査では、複合曝露によってChE活性阻害作用の増強、有機リン剤曝露における鋭敏な臨床指標である縮瞳の重篤化などの神経作用が強く認められた。また、末梢神経性の症状は速やかに、中枢性の症状はやや遅れて発現する傾向が認められた。さらに、自発運動量の測定結果から、ChE活性阻害による運動量低下と認知機能低下による運動量増加の、相反する作用が混在している可能性が考えられた。認知機能低下については、症状観察において警戒性低下が認められたことおよび高架式十字迷路検査において開架/閉架間の移動回数が減少していたことから、複合曝露による注意力あるいは作業空間記憶への影響が疑われた。(平成20年度 厚生労働省科学研究事業)
著者
チョウ ヨンマン 今井 俊夫 高見 成昭 西川 秋佳
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.35, pp.178, 2008

【目的】Zucker fattyラットは突然変異レプチン受容体遺伝子faのホモ接合体(<I>fa/fa</I>)で、若齢期から著しい肥満を呈し、単純性肥満/糖尿病モデルとして用いられている。一方、ヘテロ接合体(<I>Fa/fa</I>)及び野生型(<I>Fa/Fa</I>)のZucker leanラットは肥満にならないことから、ホモ接合体の対照として用いられているが、その生理学的/解剖学的な違いについての詳細は明らかではない。今回、Zuckerラットが乳腺発がんモデルとして応用可能か否かを検討する目的で、各遺伝子型動物の血清生化学的検査及び肝臓/乳腺/脂肪組織の組織学的検査を実施した。【材料と方法】6-7週齢の各遺伝子型の雌ラットあるいは10%コーン油添加飼料で5週間飼育した<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>雌ラットを対象とした。【結果】血清総コレステロール、インスリン及びレプチン濃度は、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>に比し<I>fa/fa</I>では有意に(p<0.05)高値を示した。中性脂肪及び血糖値には遺伝子型間の明らかな差はみられなかった。組織学的には、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>に比し<I>fa/fa</I>では乳腺組織の発達が著しく乏しく、脂肪組織においては細胞肥大が認められた。<I>Fa/fa</I>と<I>Fa/Fa</I>の比較において、基礎飼料飼育下では主な血清生化学値に明らかな差はみられなかったが、10%コーン油飼料を与えることにより、<I>Fa/fa</I>ではHDL-コレステロール値は僅かながら有意に(p<0.05)低下したのに対し、<I>Fa/Fa</I>では変化を示さなかった。<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>のいずれにおいても、コーン油を与えることによる肝臓/乳腺/脂肪組織の組織学的変化はみられなかった。【結論】<I>fa/fa</I>は乳腺発がんモデルへの応用には適さないが、<I>Fa/fa</I>及び<I>Fa/Fa</I>は脂肪負荷により脂質代謝と乳腺発がんとの関連性を解析するモデルとしての応用が可能であることが示唆された。
著者
李 成倍 金 鉉榮 韓 叮熙 姜 民球 申 浩相 梁 貞善
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4096, 2009

塗料用エナメルペイント希薄制シンナー(012)に対し有害,危険性の文献調査とこれを試験物質で物理化学的特性試験および危険性を評価して,レットを利用1日6時間,週5日,13週全身反復露出試験を通じ,物質の危険特性と吸入毒性を中心に生殖器に及ぼす影響研究を通じて,次のような結果を得た。臨床検事,体重変化で特異的所見はなかったが,200,1,000ppm君で血液学的および心臓,身長,肝臓,脳重量の露出濃度依存的有意性(p<0.01)ある変化があった。 しかし病理組織検査で呼吸器を含む閉場,身長,心臓,肝臓などで特異的病変は観察されず,標的長期全身毒性物質では分類されず,労働部告示第2008-1号<化学物質の分類,表示および物質安全保健資料に関する基準>により急性毒性区分3以上の物質に該当した。生殖器に及ぼす影響検討で雄1,000ppm群の場合有意性(p<0.05)ある精子の奇形性増加傾向と雌1,000ppm君で有意性(p<0.01)ある性周期の地縁,血清を利用したホルモン分析でestradiolの濃度依存的減少傾向などで試験物質による高濃度長期露出時生殖毒性の影響があると判断されたし,しかし定所の重さ変化や精子数の減少および病理組織学的怪死など異常所見は観察されなくて,強い有害物質と評価されることはなかった。試験物質の物理化学的特性試験結果比重0.793,沸点155.8℃,蒸気圧2.1kPa,引火点34.5℃, 自然発火点280℃であり火災爆発など熱分解特性は吸熱の場合371.4J/g,発熱の場合159.1J/g,爆発下限界は48 mg/l,爆発上限界は214mg/lでありこれは労働部告示第2008-1号により幅発声物質等級1.2流および引火性液体3流(23-60℃)に該当した。
著者
喜古 健敬 鳥塚 尚樹 太田 恵津子 永山 裕子 揚村 京子 今出 寿雄 藤川 康浩 菅沼 彰純 築舘 一男
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.38, pp.20183, 2011

【目的】非臨床安全性研究における薬剤性肝障害の早期予測・評価は,ヒトでの有害事象や開発中止等のリスク回避に向けての重要な課題である。近年,循環血中に存在する25塩基前後のmicroRNA(miRNA)が,既存の血中肝毒性マーカーであるALTやASTなどの血中酵素よりも鋭敏に肝毒性を評価するマーカーになりえると報告された。そこで本研究では,肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシスを誘発する化合物をラットに投与し,血漿miRNAの変動を解析した。【方法】8週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットに肝細胞壊死誘発化合物としてアセトアミノフェン,ブロモベンゼン,四塩化炭素,胆汁うっ滞誘発化合物としてα-ナフチルイソチオシアナートを単回経口投与した。また,フォスフォリピドーシス誘発化合物として,アミオダロン,クロロキン,トリパラノール,フロキセチンを2週間反復経口投与した。ALTを含む生化学検査を行うとともに,マイクロアレイ(GeneChip miRNA Array)にて包括的に血漿miRNAを解析するとともに,特に注目すべき変動を示したmiRNAについて定量的PCR解析を実施した。【結果及び考察】肝細胞壊死化合物の投与により,miR-122およびmiR-192は,ALTの上昇が見られた用量で著明に増加し,さらにALT上昇が認められない用量でも増加した。また,ALT上昇は24時間後のみに見られた一方で,miR-122およびmiR-192は投与1時間後から上昇した。したがって,これらmiRNAはALTの増加と相関を示すのに加え,より早期に肝毒性を検出できることが示唆された。肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシス誘発化合物の比較では,それぞれのメカニズムで特異的に変化するmiRNAが複数見出された。以上より,血漿miRNAは,特異性と感度に優れた新規肝毒性マーカーとしての利用が期待された。
著者
廣内 康彦 鈴木 詠子 光岡 ちほみ 金 海栄 北島 俊一 榎本 眞 久木野 憲司
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.33, pp.284, 2006

虚血による梗塞とは部位的に異なった遠隔非虚血部の黒質および視床に遅発性の障害が起こることをサルで確認できたので報告する。 5歳齢カニクイザル雄の5頭を用いて、麻酔下で内頸動脈分岐近位部のMCA本幹を縫合糸により永久閉塞し、6時間、1、2、4および8週後にMRI検索を実施、安楽死後に10%緩衝ホルマリン液で灌流固定した脳を摘出した。さらに定法に従い脳パラフィン標本を作製し、病理組織学的検索を行った。 その結果、MRI-T2強調画像上の高信号抽出像にそれぞれ一致し、梗塞側黒質と視床域にMCA閉塞1週後には浮腫を、また4週から8週後には、神経細胞の減少、軸索変性による硝子体の出現、反応性アストロサイトの増生および肥大の増強を観察した。梗巣を反映するMRI像は、その部位や浮腫および上記病変の程度と一致することから、遠隔非虚血部の障害の早期発見と病像の経時的変化を臨床的に追及できる可能性が示唆された。
著者
有坂 宣彦 平尾 雅郎 西尾 綾子 友澤 寛 松本 清司 武藤 信一 奥原 裕次 松見 繁 筒井 康貴 酒井 里美 竹澤 英利 山田 寛臣 三上 博史
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4164, 2009

【目的】Wistar Hannover(WH)ラットは欧州での毒性試験における頻用系統であるが,本邦での使用実績は少ない。近年,WHラットはSprague Dawley(SD)ラットに比して小型,温順な性質,優れた長期生存性等の理由で毒性試験における有用性が期待されている。しかし,WHラットと頻用系統であるSDラットとの比較例は少ない。今回,亜急性毒性試験を想定した週齢でWH及びSDラット間の系統差を検討したので報告する。【方法】無制限給餌で飼育した雌雄のWH(Crl:Wl(Han))及びSD(Crl:CD)ラットについて,8及び10週齢で血液生化学(Hitachi 7180),血球計測(Sysmex XT-2000),血液凝固(Sysmex CA530)及び骨髄検査,臓器重量測定を実施した。また,9~11週齢で回転かご付ケージ内での体重,摂餌量及び摂水量測定,自発行動解析を実施した。【結果及び考察】WHラットはSDラットに比して以下の特徴を示した。血液生化学検査では,雌雄でAST,ALT及びALPの低値が,10週齢のみでUNの高値がみられた。血球計測検査では,雌雄で赤血球及び網赤血球数の高値,好中球及びリンパ球数の低値に基づく白血球数の低値,MCV及びMCHの低値がみられた。末梢血と同様に骨髄でも赤芽球系細胞数の高値及び骨髄系細胞数の低値がみられ,両系統間で造血能又は造血ステージが異なる可能性が考えられた。凝固系項目には両系統間の差はみられなかった。臓器重量測定では,雌雄とも脾臓体重比重量の高値を示した。体重,摂餌量及び摂水量は雌雄とも低値を示し,自発運動量は雄で少なかった。以上,WH及びSDラット間でWHラットの小型かつ温順な性質という特徴と一致する差異に加え,血液パラメータを中心とした差異がみられた。これらはWHラットを理解する上での一助になるものと考えられた。
著者
竹村 誠洋
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.35, pp.24, 2008

ナノテクノロジーは社会に多大な恩恵をもたらすことが期待される反面、健康・環境へのリスクなど、社会的影響に対する懸念も少なくない。現時点でリスクが顕在化したという勧告はないが、その潜在的リスクが研究開発関係者、リスク専門家のみならず、一部の市民にも意識されている。ナノテクノロジーの社会的影響に関する課題は環境・健康・安全関連の課題と倫理・法・社会関連の課題の二つに大別される。前者に関しては、ナノマテリアルの健康・環境リスク評価管理が至近の最重要課題である。一方後者に関しては、人文社会科学者らによるテクノロジー・アセスメントなどを通して、課題が抽出・整理される段階にとどまっている。ナノマテリアルは代表寸法(粒径、断面径、膜厚など)が100nm以下の工業材料と一般認識されている。そのリスクを被る対象として、労働者、消費者、環境の3つが挙げられる。中でも被ばくする可能性が最も高いのは労働者であり、現在実施されているプロジェクトのほとんどが彼らの安全衛生を目的としている。ナノマテリアルの管理においては、従来の化学物質管理と同様、ハザード(有害性)ではなくリスクを管理する、ということが世界的に大前提となっている。ハザードが大きい場合でも曝露を低減するように管理すればリスクを小さくできる、という考え方である。現状ではリスク評価を行うための十分なデータが蓄積されておらず、規制などが確立されるまでの間は、現実的な安全衛生対策の中で最善のものを行う、ベストプラクティスの実行が求められる。ナノテクノロジーの社会受容に関する取り組みは米国で始まり、欧州、日本がそれに続いている。例えば米国ではNIOSH、EPAなどの公的機関に加え、ICONなどの産学官およびNGOを含む組織の活動も活発である。またリスク評価に関する国際協力の重要性も認識され、OECD、ISOが国際合意形成の場として活動している。