著者
管生 聖子 塚原 久美 Sugao Shoko Tsukahara Kumi スガオ ショウコ ツカハラ クミ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
no.26, pp.75-85, 2021-03-31

原著 / スンエ・キム(Sunhye Kim), ナ・ヤング(Na Young), ユリム・リー(Yurim Lee)翻訳 / 管生聖子, 塚原久美本論文は、人工妊娠中絶(以下、中絶)に関連する諸問題が韓国政府の人口調整政策によっていかに歴史的に影響を受けてきたか、また韓国の現代のリプロダクティブ・ジャスティス運動がいかに社会変革に寄与したかを調べたものである。2019年4 月11日、韓国の憲法裁判所は中絶禁止が違憲であると判決を下した。これにより、韓国議会は2020年12月31日までに制定66年になる反中絶法(堕胎禁止法)を改訂しなければならなくなった。この歴史的な判決は、韓国の数多くのフェミニスト団体、医師たちの組織、障害者権利グループ、若きアクティビストたち、宗教団体が力を結集し2017年に立ち上げたジョイント・アクション・フォー・リプロダクティブ・ジャスティスのためのジョイント・アクション(Joint Action for Reproductive Justice,以下Joint Action)の運動と密接に関連していた。本論文では、韓国におけるリプロダクティブ・ジャスティス運動の重要な鍵を握っているJoint Actionの運動と活動について論じる。Joint Actionは、障害をもつ女性たちの団体から始まった活動で、ひとたび力を結集してからは、中絶をプロチョイス対プロライフの二項対立を超えた社会正義の問題とする枠組みで捉えることで集合的に活動してきた。本論では、Joint Actionの構成や戦略、主要課題に注目することで、韓国における中絶を脱犯罪化した2019年の憲法裁判所の判決にJoint Actionがいかに影響し、いかにして裁判所が個々人の生殖の健康と権利の保障は国家の責任であるとの判断に至ったかを分析する。