- 著者
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テーウェン マーク
- 出版者
- 京都大學人文科學研究所
- 雑誌
- 人文學報 (ISSN:04490274)
- 巻号頁・発行日
- vol.115, pp.223-237, 2020-06-30
1970年代以来, 一時相当さびれていた都市祭礼は日本文化の宝物と見なされるようになった。この都市祭礼の再発見には, 京都の祇園祭がはたした役割が大きい。本稿は, 未公開の記録に基づいて山鉾巡行の戦時・占領期の歴史を山鉾連合会の視点から詳しく紹介し, その1941年から1948年までの劇的な変動を分析する。1943年の巡行中止をめぐる事情, そして1946年以降の復興方法についても, この記録が多くの新しい情報を提供するだけでなく, 山鉾巡行の意味づけの変遷も読み取れる。戦争中には武運長久を祈る「神事」として規定されていた巡行は, 戦後に神社から切り離され, 京都市観光連盟主催の観光行事に変身した。この動きのなかで, 京都市による祇園祭復興が一つの模範になり, のちに日本中の祭礼に転用されたと思われる。