- 著者
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トゥリン カーン デュイ (2013)
トゥリン カーンデュイ (2012)
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2012
元々の研究の目的は確率論を数論に応用することである。研究したいことは次の通りである : (1)ディリクレ列をスペクトルとするようなベシコビッチ概周期関数、一般ディリクレ級数の値分布, およびそれらの間の関係の研究、(2)臨界線上、あるいは臨界線の周辺での広義ディリクレ級数の極限分布の挙動の研究、そして(3)ランダム行列理論とそのリーマンゼータ関数の零点分布とモーメント問題への応用の研究。本年度には研究(3)を遂行するために、まずランダム行列理論とランダムな正則関数の理論を研究した。以下、得た結果を述べる。ウィグナー行列とは実対称行列で、対角成分と上対角成分がそれぞれ平均ゼロを持つ独立な同分布確率変数列であるときにいう。これらの確率変数はすべてのモーメントが存在することを仮定する。このランダムな行列は原子核のエネルギー準位の研究で1950年代にウィグナーが導入したものである。ウィグナー行列の経験分布が確率で半円分布に弱収束することをよく知られ、ウィグナー半円法則と呼ばれる。この結果はランダムな行列理論の出発点として考えられる。経験分布のモーメントは中心極限定理を満たすことも知られる(V. L. Girko 1988とG. W. Anderson & O. Zeitouni 2006)。私はウィグナー行列の経験分布ではなくスペクトル測度を研究した。スペクトル測度の性質は経験分布の上記で述べた性質はほとんど同じである。違うところは経験分布のモーメントの中心極限定理の極限分布は行列の成分の分布を依存しないが、スペクトル測度に対しては行列の対角成分の分布に依存する。証明方法はYa. Shinai&A. Soshnikov 1998の論文の手法を用いる。これらの結果は新しくて、ガウス型アンサンブルのスペクトル測度の分布に応用することができた。