著者
一棟 宏子 萩原 美智子 金 貞仁 崔 在順 中野 迪代 若井 希水子 イチムネ ヒロコ ハギワラ ミチコ KIM Jungin CHOI Jeasoon ナカノ ミチヨ ワカイ キミコ Hiroko ICHIMUNE Michiko HAGIWARA Jungin KIM Jeasoon CHOI Michiyo NAKANO WAKAI.Kimiko
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.121-136, 2007-03-20

本研究の目的と方法 韓国ソウル市内の分譲アパート5団地を訪問し、管理方式の実情把握と問題点を考察するために、2005年9月、2006年3月、2006年8月、アパート管理に携わる団地の住宅管理所長(住宅管理士)、住宅代表役員、住宅管理会社社長にインタビュー調査を実施した。結果と考察 韓国では70年代以降、共同住宅が短期間に大量建設された結果、伝統的な住宅様式である戸建住宅数を大幅に上回り、今では住宅ストックの6割以上を占めている。住戸の国民住宅規模は85m~2で日本と比べて広い。供給は分譲アパートが中心で、高層化した大規模団地が多く、多様な住戸規模と平面型が混在している。韓国の管理方式の特徴は、(1)管理に携わる職員の人数が多く、その役割分担は所長、管理事務職、設備系技術職、清掃員、警備員で、警備員の多さが目立つ。(2)建物のメンテナンスは従来20年程度で建替えてきた経緯があり、住民の管理に対する意識は低い。住宅法施工以来、住民の関心は建替えからリモデリングへと移っている。(3)管理を推進する住民の代表役員は立候補や推薦で決められる。全区分所有者による総会開催義務はなく、役員以外は管理に携わる義務もないため役員のなり手不足で、 代表役員の定員に欠員があるまま運営される団地がみられた。(4)韓国の管理方式は、設備中心で日常管理の質は一定程度確保でき、問題解決に機動性が発揮される反面、住民全体の合意形成の手続きが省かれたために、長期計画の展望を持ちにくく、住民自身の管理に対する役割意識が醸成されにくい状況がみられる。
著者
一棟 宏子/萩原 美智子/中野 迪代/若井 希水子/金 貞仁/崔 在順 イチムネ ヒロコ/ハギワラ ミチコ/ナカノ ミチヨ/ワカイ キミコ/キム ジュンギン/チョイ ジェソン ICHIMUNE Hiroko/HAGIWARA Michiko/NAKANO Michiyo/WAKAI Kimiko/KIM Jungin/CHOI Jaesoon
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.171-186, 2008-01-31

本研究は、分譲マンションの管理組合活動への参加困難層の負担を軽減しつつ組合の弱体化に対する支援と、建物と居住環境の管理レベルを一定に維持するしくみの検討を目指して、2005年度から取り組んでいる。その一環として、本報では2006年11月に京滋阪奈地区の管理組合(築30年以内)理事長を対象に実施したアンケート調査(有効回収59件、41.3%)とヒアリング事例調査(5件)による組合活動の実態を報告する。 アンケート調査の結果をみると、新築当初からの住民比率は、10年を超えた時点で新規居住者との入れ替えが急速に進むマンションとそうでないものに分かれる。賃貸住宅や空き家・事務所を抱えるマンションも多く、中には欠陥が疑われる工事の発見とその対応など、管理組合がかかえる問題は多様である。その中で、(1)築年数が古いマンションほど理事長は高齢化する傾向にあり、役員の世代交代をどのように進めていくか、(2)危機管理について理事長が居住者の基本的情報を把握していない事例が多く、どのようにリスク管理を進めていくか等が課題とされる。また、聞き取り調査から、(3)組合運営のための情報収集や支援に、専門家やNPO、他のマンションとの交流が大きな役割を果たしており、(4)当初設定された管理費用の見直しを行った事例も多い。マンション管理には経営的視点、技術的視点、危機管理とコミュニティ育成の視点が重要といえる。さらに、これまでの研究成果とあわせて検討し、改めて日本における分譲マンションの今後の課題を整理した。