著者
バーナード F. R.
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-22, 1974

ブリティシュ・コロンビア州(カナダ)産のCalyptogena pacifica DALL(ワダツミウリガイ)および同属の1新種C. kilmeri n. sp.の殻及び内部形態につき詳細に研究記載した。新種C. kilmeri(ブリテッシュ・コロンビア州∿カリホルニア州北部, 549∿1464m)はワダツミウリガイとは殻が薄く, 殻皮も薄く, 剥れずニスを塗ったように強い光沢があること, 外套彎入があること及び右殻に後歯を欠くことによって区別される。また足も長く, より円筒形で鰓も薄い。水管が長い所からより深く底質に潜入していると思われる。BOSS(1968, 1969)の研究によりVesicomyidae(オトヒメハマグリ科)にはVesicomya, Calyptogena及びEctenagenaの3属が含まれることになったが, カリホルニア湾産のArchiversica gigasは殻と装の上から著るしく本新種に近似し, 原記載では"外套彎入なし"となっているが, 実際には浅い彎入のある点からみて, Calyptogena属の亜属として取り扱うのが妥当と思われる。それで本新種は同亜属に属し, 殻が厚く, 光沢がなく剥れ易い殻皮をもち, 外套彎入の無いCalyptogena s.s.と別亜属になると考える。この見地からEctenagena WOODRING 1938(模式種C. elongata DALL)とAkebiconcha KURODA, 1943はArchiversicaに入るかもしれない。なお解剖学的特徴からArctica(アイスランドガイ)属は著るしく異なり, Calyptogenaを同科に置くのは不適当である。