著者
バーミンガム ジョージ・A 八幡 雅彦
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 = Bulletin of Beppu University Junior College (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.36, pp.123-130, 2017-02

近年、第一次世界大戦とアイルランドの係りに関する研究が盛んで、この戦争を描いたアイルランド文学作品が見直されつつある。北アイルランド出身の小説家ジョージ・A・バーミンガム(George A. Birmingham,1865-1950、本名ジェイムズ・オウエン・ハネイJames Owen Hannay)は、第一次世界大戦で従軍司祭として志願し、フランスで戦うイギリス陸軍に随行した。その時の体験は回想録『フランスの従軍司祭』(A Padre in France ,1918)にまとめられている。また第一次大戦とアイルランド独立戦争を題材とした短篇小説集『我々の犠牲者』(Our Casualty and Other Stories ,1919)を出版した。両作品とも兵士たちの人間性、死と向き合う心理を映し出した知られざる戦争文学の名作であると言えよう。短編小説「意中の娘」("His Girl")は『我々の犠牲者』に収められた1篇で、第一次世界大戦を題材としたユーモア、悲哀、人間性に富んだ作品である。バーミンガムの本質を示す作品として、また後世に伝えられるべき名作としてここに翻訳紹介する。