著者
平塚 雄亮 ヒラツカ ユウスケ Hiratsuka Yusuke
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.9, pp.55-65, 2011-01

本稿では、福岡市若年層方言における引用や伝聞などを表すッテについて、標準語の「って」と対比しながら記述を行った。その結果明らかになったのは、以下の3点である。(a) ッテは伝聞の用法においては、ト(標準語のノダに相当する)に接続することはできない。文末詞はヨ・ネ・ゼ・サが共起できる(引用・伝聞の場合)。(b)ッテの基本的な用法は、襟準語の「って」と同じく引用と伝聞である。また、話し手との知識・認識のずれを明示する用法がある。ノダ文に接続するッテは文末詞的な用法をもち、ッテが接続した文が「一連の発話のうち、話し手の最も伝えたいことである」ことをマークする。また、「そうトッテ」という表現は、「開き手の認識との一致」を表す。(c)ノダ文に接続するッテの用法(最も伝えたいことをマークする)は、話し手をの知識・認識のずれを明示する用法が拡張したものであると考えられる。また、伝聞には非ノダ文を、最も伝えたいことをマークする用法にはノダ文を用いるという明晰化の働きも見られる。