著者
窪園 晴夫 森 勇太 平塚 雄亮 黒木 邦彦
出版者
国立国語研究所
巻号頁・発行日
pp.1-194, 2015-03

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 連携研究 「アジアにおける自然と文化の重層的関係の歴史的解明」サブプロジェクト「鹿児島県甑島の限界集落における絶滅危機方言のアクセント調査研究」
著者
平塚 雄亮 原田 走一郎
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-13, 2012-01

本稿では,鹿児島県北薩方言のセンという文末詞について,当該方言話者への面接調査を通して記述を行った。文末詞センは,コピュラ/zyar/の否定疑問形式である「〜ジャラセン」を出自としており,ジャラセンはジャーセン,ジャッセン,ジャセンと変化し,「コピュラ(ジャー/ジャッ/ジャ)+セン」という分析によってセンが析出され,他の用言にも接続できるようになった(文末詞化した)と考えられる。また,否定の用法はもたず,全年齢層に共通してみられる基本的な用法は同意要求であるが,若年層では確認要求としても用いられるようになるという用法面の変化も起こっている。これは,「聞き手の判断をたずねるという意味をもつ形式をわざわざ判断を下す必要のない環境に適用することによって,話し手の発話を追認させる,という効果を生み出す」というプロセスで,同意要求の用法が拡張したものである。
著者
平塚 雄亮 Hiratsuka Yusuke ヒラツカ. ユウスケ
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.24, pp.55-74, 2012-02

本稿では、自然談話資料を用い、福岡市方言のアスペクトマーカにみられる言語変化について論じた。そのなかで、肯定形では伝統方言形ヨル・トルの使用が多いものの、高年層から若年層にかけて非伝統方言形テルも使用が多くなり、否定形では若年層において非伝統方言形テナイ専用へと変わりつつあることがわかった。後者の変化についてはすでに先行研究の指摘があったが、このような変化が引き起こされた要因として、本稿では、①肯定形に比べ否定形の使用が圧倒的に少ないこと、②テナイがトランの意味領域に侵入し、取って代わるという変化が起き、さらにヨル/トルの意味対立がなくなってきたところに、両者をカバーする存在としてテナイが現れたこと、の2 点を指摘した。
著者
平塚 雄亮 ヒラツカ ユウスケ Hiratsuka Yusuke
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.9, pp.55-65, 2011-01

本稿では、福岡市若年層方言における引用や伝聞などを表すッテについて、標準語の「って」と対比しながら記述を行った。その結果明らかになったのは、以下の3点である。(a) ッテは伝聞の用法においては、ト(標準語のノダに相当する)に接続することはできない。文末詞はヨ・ネ・ゼ・サが共起できる(引用・伝聞の場合)。(b)ッテの基本的な用法は、襟準語の「って」と同じく引用と伝聞である。また、話し手との知識・認識のずれを明示する用法がある。ノダ文に接続するッテは文末詞的な用法をもち、ッテが接続した文が「一連の発話のうち、話し手の最も伝えたいことである」ことをマークする。また、「そうトッテ」という表現は、「開き手の認識との一致」を表す。(c)ノダ文に接続するッテの用法(最も伝えたいことをマークする)は、話し手をの知識・認識のずれを明示する用法が拡張したものであると考えられる。また、伝聞には非ノダ文を、最も伝えたいことをマークする用法にはノダ文を用いるという明晰化の働きも見られる。