著者
根本 啓一 ピーター グロア ロバート ローバッカー 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-96, 2015-01-15

本稿では,日本語版と英語版のウィキペディアを対象とし,ウィキペディアの記事を編集するユーザ間に存在する社会ネットワークが,記事編集という協調作業においてどのような影響があるかを分析した.記事編集に関わるユーザ間の社会ネットワークを計測するために,個々のユーザが持つユーザ会話ページへの書き込みによるインタラクションに着目した.英語版のウィキペディアでは,記事の質が最も高い3085の秀逸な記事と,比較的質の高い良質な記事を含む80154の記事での記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.日本語版ウィキペディアでは,69の秀逸な記事と873の良質な記事における記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.協調作業のパフォーマンス指標として,記事の質があるレベルから1段階向上し,秀逸な記事や良質な記事と評価されるまでに要した時間を利用した.その結果,記事編集に関わるユーザ間に社会ネットワークが事前に構築されていると,記事の質の向上に要する時間が短くなることが示された.さらに,ユーザ間のインタラクション関係を見ると,ユーザ間の関係構造がより密なネットワークを形成しており,中心性の高いネットワークであると,記事の質を高める協調作業のパフォーマンスが高いことが分かった.これらの結果からユーザ間の社会ネットワークが編集コラボレーションのパフォーマンスに寄与することが示唆された.In this study we measure the impact of pre-existing social network on the efficiency of collaboration among Wikipedia editors in the Japanese and English Wikipedias. To construct a social network among Wikipedians we look to mutual interaction on the user talk pages of Wikipedia editors. As our data set, we analyze the communication networks associated with 3085 and 69 featured articles ― the articles of highest quality in the English and Japanese Wikipedia, comparing it to the networks of 80154 and 873 articles of lower quality from the English and Japanese Wikipedia, respectively. As the metric to assess the quality of collaboration, we measure the time of quality promotion from when an article is previously promoted until it is promoted to the next level. The study finds that the higher pre-existing social network of editors working on an article is, the faster the articles they work on reach higher quality status, such as featured articles. The more cohesive and more centralized the collaboration network, and the more network members were already collaborating before starting to work together on an article, the faster the article they work on will be promoted or featured.
著者
根本 啓一 ピーター グロア ロバート ローバッカー 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-96, 2015-01-15

本稿では,日本語版と英語版のウィキペディアを対象とし,ウィキペディアの記事を編集するユーザ間に存在する社会ネットワークが,記事編集という協調作業においてどのような影響があるかを分析した.記事編集に関わるユーザ間の社会ネットワークを計測するために,個々のユーザが持つユーザ会話ページへの書き込みによるインタラクションに着目した.英語版のウィキペディアでは,記事の質が最も高い3085の秀逸な記事と,比較的質の高い良質な記事を含む80154の記事での記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.日本語版ウィキペディアでは,69の秀逸な記事と873の良質な記事における記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.協調作業のパフォーマンス指標として,記事の質があるレベルから1段階向上し,秀逸な記事や良質な記事と評価されるまでに要した時間を利用した.その結果,記事編集に関わるユーザ間に社会ネットワークが事前に構築されていると,記事の質の向上に要する時間が短くなることが示された.さらに,ユーザ間のインタラクション関係を見ると,ユーザ間の関係構造がより密なネットワークを形成しており,中心性の高いネットワークであると,記事の質を高める協調作業のパフォーマンスが高いことが分かった.これらの結果からユーザ間の社会ネットワークが編集コラボレーションのパフォーマンスに寄与することが示唆された.