著者
田村 智淳 桂 紹隆 フランシス ブラサル
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年以降、入力済みの梵文テキスト(Vaidya本)、チベット語テキスト(デルゲ版)、漢訳テキスト(60・80・40巻本)の校正を開始し、同時にSuzuki本、チベット語ペキン版、収集した諸写本との校合に従事した。研究期間中に収集した28本の写本の中、5本の画像化を終了し、残余については10〜50%のスキャン率である。総体的には約30%を画像化した。華厳経入法界品第1章の完全な"Tri-lingual text"をめざして、以下のような最終報告書を作成した。(1)既刊本のVaidyaテキストの下に、Royal Asiatic Society所蔵の写本の読みを全文ローマ字体で記載した。さらに、Suzuki本、Baroda写本、Cambridge写本の異読をfolio-lineの数字を伏して記載した。(2)デルゲ版チベット語テキストの全文を梵語テキストの下に記載し、ペキン版の異読をその下に附した。(3)漢訳3本の全文をチベット語テキストの下に記載した。これらの作業を通して気づいたことは、少なくとも第1章に限れば、梵語テキストおよびチベット語テキストに関しての異同は、そのほとんどが書写ミスであり、また語句の順序の違いであり、新しい解釈の資料となりうるようなものは見いだせなかったことである。しかし、同様の作業を入法界品の全章にわたって完了するならば、あるいは何かを見いだせるのかもしれない。特に、漢訳3本のあいだの異同は多く見られ、それぞれの漢訳の梵文原典を推察することは今後の課題であろう。