著者
フランシス R. ダグラス
出版者
上智大学
雑誌
アメリカ・カナダ研究 (ISSN:09148035)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-36, 1992-11-30

本論文は, 「フロンティア理論」の観点からカナダとアメリカの西部を「国境を越えた」比較をしようとする試みである。フレデリック・ジャクソン・ターナーの「フロンティア理論」を利用しつつ, アメリカ史のフロンティア理論の中に描かれる西部のイメージが, 定住期のカナダ・プレィリー西部での移民に対する宣伝や大衆文学に同様に現れているかどうかが検証される。まず, ターナーのフロンティア理論に見られるフロンティア精神の神話, 及びそれに内在する, アメリカ西部とそこへの早期の移住者の本質に関する仮説が紹介される。次に, 定住期(およそ1870年代から1914年まで)のカナダ政府, カナディアン・パシフィック鉄道会社, 不動産会社が打ち出した移民に対する宣伝の中に見られるカナダ西部のイメージを検証し, カナダ西部に同様のフロンティア。イメージが現れている度合いを見る。その結果, 同様のフロンティア・イメージがカナダ西部, アメリカ西部両方に相当程度存在していたことが証明されたが, 同時に顕著な例外も少なからず観察できた。このような差異は, アメリカ西部との比較においてカナダ西部が特異な性質を有していたことの反映であると考えられる。