著者
中川 昌一 ブコバック M. J. 平田 尚美 黒岡 浩
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-19, 1968 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
8 11

1. リンゴ Wealthy および日本ナシ新世紀の有種子果, ならびにGA7およびGA4処理による単為結実果について, その形態学的差異を調査した。ジベレリン処理果は有種子果にくらべて縦径は大きくなるが, 横径は変わりがないかあるいは小さかつた。有種子果における皮層組織の厚さは, 果実の基部が頂部および中央部より大きかつたが, ジベレリンによる単為結実果では逆に頂部が中央部および基部より大であつた。有種子果の基部における皮層の増加は, その組織の細胞数と関係があつた。リンゴの単為結実果の頂部組織には, 中央部および基部組織より細胞数が多く, また, 細胞も大きかつたが, 日本ナシの単為結実果では頂部組織により大きな細胞がみられた。有種子果とジベレリン処理による単為結実果の皮層組織における細胞分裂は, リンゴ果実では開花後3週から4週の間に, 日本ナシ果実では開花後4週から5週の間に停止した。2. リンゴと日本ナシの有種子果および単為結実果へ開花後2週間めに果実の側面にジベレリンを処理すると変形果を生じた。このリンゴおよび日本ナシの変形果では, ジベレリンを処理しない側の組織にくらべて処理した側の組織で細胞数は増加し, 細胞も大であつた。この傾向は, 有種子果より単為結実果において顕著であつた。日本ナシにおいては, 開花後4, 6および8週間めにGA7を処理したが, いずれの場合も処理しない側にくらべて細胞数も細胞の大きさも増加し, その結果, 皮層組織の厚さは著しく増大した。日本ナシにGA3を処理した場合は, 処理時期のいかんにかかわらず変形果を誘起することはできなかつた。