著者
ブランチャード フランソワ
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的はTHz電磁波を用いて、様々な生体物質の化学組成・特性を非破壊で評価可能、生体活動に伴う物質移動をリアルタイムで可視化可能な手法を構築することである。これまでに構築してきたTHz近接場顕微鏡を改良し、共同研究先であるオリンパスの顕微鏡を組み合わせて、より使い勝手の良い顕微鏡システムを構築した。この顕微鏡ではビデオレートで370×740μm^2と広範囲の画像を分解能10μm以下(THz電磁波の波長は数百μmなので、波長/100以上の分解能)で得ることが可能である。また、様々な環境下で測定が可能なように、この顕微鏡専用のインキュベータや、パージボックスも同時に設計、作成した。この顕微鏡を用いて、本年度(最終年度)行ったことは以下の通りである。1.電場増強のための大口径リング共振器の評価をおこない、リング共振器内での電場増強効果(3倍)を確認した。リング内にサンプルを設置することで、より高強度THz電磁場による高感度な評価が可能となると予想される。2.この共振器のデモンストレーションとして、微少量(~10ng)の機能性物質(porous coordination polymers(PCPs))の特性評価を行った。THz近接場顕微鏡で共振器内にPCPのあるものと、共振器内に無いもののTHz応答を空間分解して同時測定することで、長時間でもS/Nの良い測定が可能となる。この研究期間内に6本のレビューを含む論文、および1本の特許出願を行った。レビュー論文では本研究課題を含むこれまでの成果をまとめるとともに、最近の成果についても述べている。最近の成果であるメタマテリアル近傍の電場、放射電場の観測についてはこの8月に論文が掲載された。機能分子PCPのにおける分光イメージの結果については論文化する予定である。