著者
水野 直樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

日本の植民地(特に朝鮮)における治安維持法の運用、体制などに関する実証的検討を課題とする本研究は、次のような諸点において日本内地とは異なる治安維持法体制が朝鮮で構築されていたことを明らかにした。法制そのものが日本内地と異なる朝鮮では、治安維持法に対する当局の認識も相当異なり、斎藤総督は、治安維持法が議会で成立しなければ、朝鮮独自の制令で制定すると示唆する発言をしている。同法が最初に適用されたのは、日本内地ではなく朝鮮における事件であった。当初から、治安維持法は朝鮮の独立運動に適用されたが、「朝鮮独立=帝国領土の僭竊=統治権の内容の縮小=国体変革」という図式が判例として確立するのは、1930-31年のことである。独立運動への適用と並んで在外朝鮮人への適用によって、同法は拡大解釈された。検挙者・被起訴者のうち、「帝国領士」外に住む朝鮮人の比重は非常に高かった。中国共産党に加入した朝鮮人にも適用されたため、同法はいっそう拡大解釈・適用されることになった。朝鮮における治安維持法運用の大きな特徴は、死刑判決が下されたことである。従来の研究では、同法違反だけで死刑判決を受けた事例はないとされてきたが、少なくとも1件あったことを明らかにすることができた。1930年代以降の転向政策においては、朝鮮人に厳しく転向が求められた。「内鮮一体」「皇国精神」の強調、被保護観察者の生活全体を監視・教化するシステム(大和塾)の構築などは、日本内地では見られなかったものてある。思想犯予防拘禁制度は日本内地に先がけて朝鮮で実施され、被収容者に「日本人になり切る」ことを求め、それが認められない限り、釈放の可能性のないシステムとして運用された。このような植民地における実態を無視しては、治安維持法の全体像を把握・理解することはできないのである。
著者
高山 佳奈子 松宮 孝明 神例 康博 辻本 典央 安達 光治 平山 幹子 品田 智史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

定例の「経済刑法研究会」を2018年9月30日、同11月11日、2019年2月17日にいずれも立命館大学朱雀校舎にて開催した。検討した内容は次のとおりである。(1)共同執筆により出版予定の書籍『新経済刑法入門(第3版)』について、特に、新たに設ける内容である、「銀行預金をめぐる犯罪」および「『独占禁止法違反の犯罪』への公正取引委員会の対応」を中心に検討を加えた。後者に関して、公正取引委員会の中里浩氏を招へいし、専門的知見の提供を得た。(2)華東政法大学と合同で開催する経済刑法シンポジウムの内容について、日本側からは「AIと刑法」「AI自動運転と緊急避難」「詐欺罪」「仮装通貨と経済犯罪」「背任罪」をテーマとすることを決定し、各報告担当者からのプレ報告を受けて討論を行った。(3)これまでの華東政法大学および武漢大学との国際シンポジウムの成果を受けて、書籍『日中経済刑法の最新動向』を出版する予定であり、その原稿の作成・検討を行った。収録予定の論文のテーマ(日本側)は、「市場競争の激化と経済犯罪の規制――証券犯罪を中心に――」「会社再建と強制執行妨害の罪」「コンピュータ関連の詐欺罪について」「悪質商法と経済犯罪――ねずみ講・マルチ商法の規制を題材に――」「食品の安全と過失論の役割」「食品の安全と刑事責任」「刑事製造物責任と組織の責任・個人の責任」「日本における過失犯論の発展」「犯罪論体系と比較法研究」「証券取引法から金融商品取引法へ」「インサイダー取引の刑事規制」「日本法における相場操縦・開示規制違反」「ネット金融と財産犯」「日本における利殖商法と組織的詐欺罪」である。
著者
高山 佳奈子 山本 雅昭 神例 康博 辻本 典央 品田 智史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

定例の研究会を3年間で全13回実施し、報告を基にした成果を法律学術雑誌に公表した。公正取引委員会から講師も招へいした。武漢大学法学院および華東政法大学法律学院との国際シンポジウムを各2回実施し、「証券犯罪」「金融犯罪」「インターネット金融犯罪」をテーマに各国の最新の立法および実務の状況を報告するとともに理論的な討論を実施した。成果は平成30年度内に論文集として刊行する。
著者
高山 佳奈子 山本 雅昭 神例 康博 松原 英世 品田 智史 張 小寧 松宮 孝明 斉藤 豊治 平山 幹子 佐川 友佳子 嘉門 優 永井 善之 大下 英希 中島 洋樹 井上 宜裕 前嶋 匠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本・中国・台湾・韓国などの東アジア諸国では、従来、それぞれソビエト連邦法、ドイツ法、日本法などの影響下に独自の刑事制度を発展させてきた。経済刑法もその一部であり、個別に発生する問題に対処するための立法が多かった。しかし、経済活動の国際化に伴い、各国に共通する問題が見出されるとともに、その対策においても、相互の方法を参照する意義が高まっていることが、本研究によって明らかになった。その意義は、個別具体的な立法のみでなく、刑法総論や制裁制度論全般に及んでおり、今後研究を継続する必要性もまた示された。
著者
山中 伸弥 JOHANSSON ERIK MARTIN Johansson Erik Martin JOHANSSON Erik Martin
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本研究の目的は、iPS細胞にがん特異的ゲノム変異を導入することで、脳腫瘍の発生をインビトロで再現し、遺伝子発現ダイナミクスを中心にした分子機序を明らかにすることである。本研究では、シングルセルエピゲノム解析によって、細胞の分化過程における遺伝子発現制御のダイナミクスを明らかにする。特に細胞分化過程における遺伝子発現のヘテロ性を考慮した解析を行うことによって、シングルセルレベルでの分化の度合いの定義を行い、その分化の度合いに従った遺伝子発現制御を明らかにする。これらのシングルセル技術を脳腫瘍発生モデルに応用することで、脳腫瘍の発生モデルを構築すると共に創薬スクリーニングの基盤を提供する。具体的には、二次性神経膠腫で特異的に見られるIDH1変異体をiPS細胞に導入し、この変異体をアストロサイトなどの神経細胞へ分化させる際に一過的に癌発現させる。その変異体がひきおこす正常分化の異常を捉えることを試みる。さらには複数の変異遺伝子を同時、または連続的に発現させることで多段階発がんモデルを作製する。これらのモデルを用いて、正常な神経分化から逸脱する細胞集団をシングルセル遺伝子発現解析で同定する。さらにはこの分化系を用いて癌様細胞が発生する培養条件で、それらの細胞集団を標的とする化合物の同定を試みる。
著者
高橋 めい子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主題は「放射線誘発甲状腺がんの発症リスクに関与する遺伝子多型性SNPsの同定」である。申請者らはチェルノブイリ原子力発電所の事故により乳幼児期に放射能被爆を受けたベラルーシ人から、早発型甲状腺乳頭がんの患者群の検体と、その患者と年齢、性別、被爆時の居住地が一致する健常者群の収集をし、全ゲノム関連解析GWASを実施した。
著者
右田 裕規
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.9, pp.93-114, 2001-12-25

The fact that the pictures of the Imperial family of Japan were called "goshin-ei", and were treated as the icons of the religious observance at schools in modern Japan was pointed out by a lot of preceding studies on the "goshin-ei". According to these precedent studies, on festival days of the Imperial family, school students at the prewar days were made to worship pictures of the Imperial family that Japanese government sent to many schools, and through these religious observances at schools, the government succeeded in cultivating the respects for the Imperial family in Japanese people. By the way, many pictures and portraits of the Imperial family of Japan were sold by private merchants, and were printed in newspapers and magazines frequently at prewar days. But preceding studies on the "goshin-ei" treated the pictures of the Imperial family that the government sent to schools exclusively, and didn't refer to the pictures and portraits of the Imperial family sold or distributed by private merchants and the mass media. The purposes of this paper are to elucidate the activities of the Japanese government, the mass media and people around gravures of the Imperial family of Japan in newspapers and magazines at prewar times, and to make clear the mentalities to the Imperial family that these gravures cultivated in Japanese people.
著者
谷口 俊一
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.8, pp.147-165, 2000

This article deals with the image of Japanese people serving in the army during the interwar period. To analyze this topic, I mainly used readers' columns of newspapers. At this time during which disarmament conference like the Washington Conference took place, Japanese armed forces became a target of criticism. As a consequence, the land forces reduced their armaments without holding an international conference. Critics about the armed forces increased while, on the other hand, the practice of conscription, among other things, was not questioned, and pacifist opinions were hardly heard either. Besides, soldiers having accomplished their military service were highly considered by certain people. Especially from the Manchurian Incident on, critics towards the army faded away. Japanese people became aware of the importance of supporting the army because everyone had a relative or a friend engaged in the army, with the result that many of them unwillingly started to get involved into the war efforts. In such a perspective, one can wonder about the fact that, among all critics formulated against the army after World War I, which clearly influenced the disarmament process in Japan, most ones have been made towards the army as an institution but surprisingly not towards the soldiers themselves. It is also interesting to notice that, rather than diminishing the army officers' strength, on the contrary, all those critics tended to reinforce their intentions of pursuing the militarization of the country. To a certain extent, we may conclude that all those critics might have helped to the constitution of a military state, which would also mean that japanese people failed in preventing the rise of militarism.
著者
筒井 琢磨 五十嵐 忠孝 坪内 良博
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.369-383, 1990-12

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。Two sets of data were obtained on Bangladesh villages : a genealogical table of inhabitants of one village, Gobarchitra; and survey data on two villages, Gobarchitra and Panchkitta, obtained by using questionnaires. By analyzing these data, we examined the high fertility of the two villages. First, we used the genealogical data on Gobarchitra. Using a patrilineal table, we tested the reproductivity of the male population. Over five generations, we checked four pairs of father-son generations. By several estimation methods, we obtained several values. Second, we used survey data on the two villages. Questionnaires asked all the married females about their birth histories. Compared with nation-wide data, two villages showed comparatively high fertility. There was a difference in fertility between the two villages, which appeared to result from a difference in mean age at first marriage. No other factors were identified. From cohort analysis, we concluded that those two villages had traditionally different levels of mean age at first marriage. As for the government's family planning program, neither village showed much effect. Generally, there is a high relation between the diffusion of a family planning program and education. Unfortunately, we could not examine this as we had no data on education.
著者
石川 禎浩 高嶋 航 小野寺 史郎 村上 衛 森川 裕貫 田中 仁 丸田 孝志 江田 憲治 瀬戸 宏 武上 真理子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

2017年度は、研究分担者の協力を得て2015年4月に発足した毛沢東伝研究についての共同研究グループの研究会を継続実施した。研究グループによる研究例会は基本的に隔週金曜午後に京大人文研で定期開催し、年度内に15回開催することができた。例会では2015年以来収集してきた毛沢東伝に関するデータ、資料、様々な版本などを持ち寄って分析するとともに、毛沢東の国外における影響をとりあげるなど、日本の研究者にしかできないアプローチで実態解明を進めた。主な研究報告の中身は以下の通りである:高嶋航「毛沢東とスポーツ」、田中仁「現代中国政治における毛沢東経路の発生」、江田憲治「遊撃戦争とは何か?」、石川禎浩「『全連邦共産党(ボ)歴史小教程』と毛沢東の党史」、三田剛史「毛沢東統治下の経済学者」、瀬戸宏「毛沢東時代の知識分子像」、丸田孝志「毛沢東の伝記・物語の成立と展開」、村上衛「大躍進と日本」、小野寺史郎「中華人民共和国初期の「記念節日資料」中の毛沢東略伝について」、森川裕貫「「ハリコの虎」から「精神原子弾」へ」。研究の中間段階の公開とデータの収集、および学術交流を主目的として9月に本研究グループの主要メンバー7名が北京をおとずれ、毛沢東研究の本山とも言える中国共産党中央組織の党史関連部門とのコンタクトをはかった。結果として、先方の面会不履行により交流は実を結ばなかったが、党史関連の収集という目標は達成することができた。また、研究成果の将来における公表を見越して、5月に石川が北京の出版社との打ち合わせをおこなう一方、9月、12月、3月にも中国、ドイツにおいて、研究成果の報告や資料調査を進めた。そのうち、いくつかの研究成果は中国の学術刊行物に相次いで掲載されるにいたっている。このほか、京大人文研の所蔵する旧鱒澤彰夫氏所蔵の文化大革命期紅衛兵資料の整理を継続した。
著者
五十嵐 忠孝
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.593-624, 1988-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。This report aims to establish the socialcultural contexts of fertility behavior common to ethnic Sundanese, who predominate in the Priangan Highlands, West Java, and have long been well-known for their very young marital age and high fertility, in the hope that an understanding of fertility-related social perceptions and cultural practices of a particular ethnic group will provide a basis for explaining regional and ethnic differences in levels and patterns of fertility in Indonesia. Here I will simply describe a number of institutions and practices involving the early stage of the reproductive period in women, i. e., from the attainment of adulthood to the consummation of the first marriage, which I observed during fieldwork in a Priangan Sundanese village. To compare social-cultural contexts of fertility, I also present a brief review of data on the fertility behavior of other Indonesian ethnic groups, particularly of ethnic Javanese, of which rather reliable data is available. Fertility-related practices in Sundanese society are distinct from those in Javanese society in many ways. For example : 1. A considerable proportion of rural Sundanese girls get married before menarche, indicating that marriageability for rural Sundanese girls predates menarche, even though rural Sundanese residents state that menarche signals the attainment of marriageable age. 2. Most marriages, including those of premenarcheal girls, take place at the girl's own wish, and are not arranged by parents or relatives. Almost all women interviewed showed a strong dislike for arranged marriage including "child marriage." 3. A younger sister is strictly forbidden to marry before an elder sister. This practice naturally leads to the virtual universality of marriage at an early age. 4. Consummation of marriage, even "premenarcheal marriage, " takes place at a very early stage. This means that divorce without consummation has rarely occurred, even though many first marriages have ended in divorce.
著者
早瀬 篤
出版者
京都大学
雑誌
古代哲学研究室紀要 : hypothesis : the proceedings of the Department of Ancient Philosophy at Kyoto University (ISSN:0918161X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.44-73, 2004-03-15

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
元木 泰雄
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1995-01-23

新制・論文博士

21 0 0 0 IR 尊攘論の時代

著者
高橋 秀直
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.39-207, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
原田 浩二 小泉 昭夫 Steinhauser Georg 新添 多聞
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原子力発電所におけるがれき撤去作業に伴う原子炉3号機建屋からの放射性物質放出量を基にした大気拡散シミュレーションを行い、2013年8月に南相馬市で実測された大気中濃度、降下量を再現した。粉じんが降下したとされる南相馬市原町区10地点で、撹乱されていない箇所での土壌試料21検体について放射性ストロンチウム、プルトニウム分析を実施し、放射性ストロンチウムは比較的高い地点が見られるなど挙動、拡散は異なる可能性が示唆された。これらの結果から、二次拡散における粗大粒子の拡散は降下物量に有意な影響を与え、コメをはじめとする農産物汚染を引き起こしうることが示された。
著者
山下 剛 望月 新一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は, 以下を実施した:1、宇宙際幾何学のさらなる発展の礎および国際的に他の研究者への理解の普及として本年度は以前から継続していた宇宙際Teichmuller理論のサーベイの執筆を山下は完了した(完了後も点検を続け改訂を重ねている)。2、研究分担者の望月は宇宙際Teichmuller理論の(細かい)改良を行った。3、宇宙際Teichmuller理論を国際的に他の研究者と議論を行った。また、宇宙際幾何学のさらなる発展としてある種の「スピン構造」についての模索を行った。
著者
永井 和
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.85-201, 2002-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。