著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.