著者
梶川 正弘
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.349-355, 1995-11-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

雪片成長の初期過程を探るため,針状雪結晶の集合特性(衝突・付着過程の特性)を結晶2個から成る雪片の顕微鏡写真により調べた.両結晶の付着型は,交差付着型と点付着型に分類された.交差付着型は,両結晶のサイズが類似し,したがって落下速度差が小さい場合に多くみられた.一方,点付着型の割合は,両結晶のサイズの差が大きく,落下速度差が大きい場合に増加した.両結晶のc―軸のなす角度は,交差付着型で直角に近いものが多数を占めたが,点付着型ではその頻度分布に目立った特徴はみられなかった.これらの結果は,交差付着型と点付着型の雪片が,各々両結晶まわりの流れの相互作用と小さい結晶の大きい結晶への慣性衝突に主に起因することを示唆している.
著者
梶川 正弘 薄木 征三 武藤 哲男
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.249-254, 1995-01-31

A strong wind disaster was caused by Typhoon 9119 in the Tohoku district on September 28,1991. The purpose of this report is to investigate the relationship between the surface wind field and the localization phenomena of severe forest damage by the typhoon in Akita Prefecture. The results are summarized as follows. 1)The strong wind of about 20 m/s in mean wind speed prevailed for about three hours in the restricted region of the northern inland part in Akita Prefecture. 2)This restricted region was coincident with the towns and villages suffered the severe forest damage. 3)The facts mentioned above suggest that Typhoon 9119 possessed the unique structure in the dissipating stage.
著者
小川 信明 菊地 良栄 後藤 博 梶川 正弘 尾関 徹
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.503-511, 1998-08-05
被引用文献数
11 9

日本は海に囲まれており, 降水中には海塩起源と考えられるイオンが多量に含まれる. そこで, 降水中でも海水中のイオン組成比が保持されると仮定し, N^+又はCl^-イオン濃度を基準に, 降水中の汚染物質を海塩起源(ss)と非海塩起源(nss)に区分することが一般的になされてきた. しかし, 汚染物質を含んだ雨雲や乾性浮遊物が移動する途中にガス状酸性物質とイオン交換する可能性などがあり, 必ずしもss/nssという区分は正しくないという意見もあった. そこで, 1993年4月から1995年8月までの期間, 秋田市と湯沢市で1日ごとの降水を採取し, そのイオン組成を化学分析し, それらのデータに, 著者らが開発した制限斜交回転因子分析法を適用し, 降水中の汚染起源を抽出し解析した. その結果, 海水中の塩組成に非常に近い海塩由来の汚染起源が抽出された. しかし, Na^+及びCl^-イオンを含む海塩成分の一部が降水を酸性にする硫酸酸性の汚染起源の中にも含まれていることが分かった. この因子は, 冬季と冬季以外, 又海に近い秋田と内陸の湯沢で組成の違いを示した. このことは, 海塩由来の汚染物質が採水地点に到達するまでに, 組成の変質を受けていることを強く示している.
著者
小元 敬男 文字 信貴 平田 尚美 梶川 正弘 竹内 利雄 吉野 正敏
出版者
大阪府立大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1985

本年度は、降ひょうと突風の実態の把握及び基礎研究に必要なデータを得る目的で、分担者のほゞ全員が群馬県で観測を行った。6月前半には、レーダー観測、突風観測、ひょう粒の分析の実験を実施、7月15日〜8月15日の期間には上記の他に高層気象観測、気圧分布観測、短期間ではあるがドプラーソーダによる観測を行った。更ル、5月15日〜8月15日の期間、記録計による100地点での降ひょう観測を行うなど、北関東夏季の積乱雲対象としてかつてない充実した研究観測を実施したのであるが、昨夏は群馬県における雷雨は異常に少なく予期したほどのデータは得られなかった。しかし、この観測期間中に観測本部のある群馬県農業総合試験場にひょうが降り、また地元の協力者から分析用の大きなひょう粒が提供されるなど、ひょうの基礎研究に役立つ資料が得られた。更に同地域における下層大気の昇温が積乱雲発達に及ぼす影響の研究に必要なデータも得られた。例年より少なかったが、上記期間中に発生したひょう害及び突風(災)害の現地調査も行った。その他の分担研究課題の成果として、ひょう害の変遷に関する研究では、関東甲信地域のひょう害は1950年頃までは5月下旬を中心とするピークが一つあっただけであるが、その後7月下旬を中心とするピークが現れ顕著になりつつあることなど幾つかの新らたな気候学的事実が明らかにされた。また、防ひょうネットの研究では、千葉県の実験地に激しい降ひょうがあり、実際の場合について、種々の網目のネットの被害防止効果を測定できた。無被害地の実験データと併せて、防ひょうネットの最適網目は10mmであることが確められた。激しい雷雨の常習地域で長期にわたって連続観測を行ったにも拘ず、異常年に当ってしまい、充分データを得ることができなかった。この種の研究は根気よく続ける必要がある。
著者
後藤 博 梶川 正弘 菊地 勝弘 猿渡 琢
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.191-198, 2006-05-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

乾き新積雪(新雪)からこしまり雪に変態する過程で,圧縮粘性率と密度の関係が結晶形と雪温にどのように依存するかを調べる目的で室内実験を行った.その結果,雪温と圧力が低いほど,こしまり雪への変態に長時間を要した.また,圧縮粘性率と密度の関係は,結晶形と雪温により大きく異なることを確認した.さらに,圧縮粘性率の雪温依存の度合いは,新雪段階では卓越結晶形により異なることがわかった.
著者
梶川 正弘 卜蔵 建治
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.46-56, 1989-09-30

A severe disaster was caused by gusts and hailfalls in Aomori and Miyagi Prefectures on September 7,1986. This report outlines meteorological conditions and damages in relation to the hailstorms. The followings are the main results. 1) The gusts accompanied by hailfalls were brought about by a group of cumulonimbi related mainly to the unstable stratification by advection of upper cold air. 2) The damage due to gust in Aomori Prefecture was the drop of apple fruits and the lodging of apple trees by a tornado. 3) Most of the damages in Miyagi Prefecture were the injury of heads of rice plants by hailfalls.
著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.
著者
上田 博 梶川 正弘 早坂 忠裕 遊馬 芳雄 菊地 勝弘 和田 誠 ソラス M.K.
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北極域の気候変動や水循環を解明する上で、ポーラーローを含む北極低気圧の発生・発達過程と北欧北極圏やノルウェー海上での水蒸気輸送や雲、降水粒子の形成過程を明らかにするために、地上リモートセンサーを用いた現地観測を行なった。1999年1月から4月までスウェーデン・キルナで現地のスウェーデン宇宙物理研究所の協力を得て気象観測用Xバンド鉛直ドップラーレーダーのデータを取得した。得られたデータを解析した結果、スウェーデン・キルナ地方の降水はスカンジナビア山脈の影響を強く受け、空気塊の斜面上昇による山岳性降水やノルウェー海上を北上する低気圧に伴う上層の前線からの弱い降水と山脈の強制上昇の影響を受けた下層雲との相互作用によって降水が増強されている様子が観測された。また、1999年10月にノルウェー海の中央に位置するベアー・アイランドのノルウェー気象局の観測所、スピッツベルゲン島・ニーオルセンの国立極地研究所の観測施設に出かけ、北極圏の低気圧に関する資料やデータを収集した。また、その際に簡易気象観測機器を設置して北極圏の低気圧に関してのデータを取得した。これらのデータは厳冬季を含む北欧北極圏やノルウェー海上での雲や低気圧の構造・発達過程、水循環・輸送過程が明らかになり、ポーラーローを含む北欧北極圏での気象擾乱の構造や水・エネルギー循環を明らかにするための基礎データとなることが期待される。
著者
山田 知充 井上 治郎 川田 邦夫 和泉 薫 梶川 正弘 秋田谷 英次
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

降雪や積雪などの雪氷現象に関わる災害の中で, 新聞に報道されるものは社会的関心が高く, 日常生活に深い関わり持っている. 雪害は自然現象と人間社会との関わりであるから, 地域や季節および時代により雪害の内容や発生機構は変化する. 本研究では新聞記事からの雪害事例収集を統一的に行い, 雪害記載カードを作製し, これを基に雪害のデータベースを作製した. 北海道, 秋田県, 新潟県, 富山県, 石川県, 滋賀県, 京都府, 福井県, 兵庫県について, それぞれの地方新聞を用いて, 豪雪年(昭和55-56年冬期)寡雪年(昭和61-62年)の2冬期分につき約1,800件のデータベースを完成した.一方, 雪害と自然現象を対比するため, 対象地域の2冬期分のアメダスデータを磁器テープから地域別に編集し, フロッピーデスクに収録した. 雪害の発生, 規模, 内容の地域特性と自然現象を比較するため, 本年2月末, 対象地域一体の126地点にわたって積雪調査を実施した.いずれの地域も, 雪害件数の最多は道路や鉄道等の交通等の交通障害, 次いで雪が原因となった交通事故であった. 豪雪年は道路除雪が不備なため, 走行車両の減少と低速走行のため, 事故件数は減る傾向にあるが, 除雪が完備すると事故件数の増加が予想される. 豪雪年には建物の倒壊や雪処理中の人身事故が目だつ. 京都, 滋賀では列車の運行規制, 道路のチェーン規制, 北陸地方では屋根雪処理中の転落事故, 東北地方では他県での降雪による列車の遅れ(もらい雪害), 北海道では空港障害が多く, 雪害の種類や規模の地域的特徴が明らかとなった. 雪に対する防災力が地域と季節によって大きく変化するため, 雪害を発生させる降雪量は地域差が大きい. 小雪地では数mm/dayの降雪で雪害が発生するが多雪地では40mm/day程度である. 社会の進化に応じて雪害の様相も変化するため, 雪害の予測や対策のために継続した調査が必要である.
著者
梶川 正弘
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-48, 1988-03-01

The severe disaster caused by gusts and hailfalls occurred in the southern inland of Akita Prefecture on August 6,1985. This report deals with the outline of meteorological conditions, damages and characteristics of the gusts in relation to the hailstorms. The following main results were obtained : l) The gusts accompanied with hailfalls were brought about by well-developed thunderstorms related mainly to the unstable stratification by advection of upper cold air. 2) The damaged area by the gusts is about 5 km in north-south direction and about 4 km in east-west direction. The degree of damages is remarkable in western and southwestern side of the hailfall area. Furthermore, the gusts show a divergent tendency in the direction of mainly west, southwest and south from the damaged area by hailfalls. Therefore, it seems that the damages by gusts was caused by the downburst accompanied by well-developed cumulonimbus. 3) Most of the damages were the injury of heads of rice plants and trellises and blossoms of hops by hailfalls and gusts.