著者
ペッ ペンシャイ 中島 典之 古米 弘明
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.433-442, 2002

水環境への道路側溝堆積物の雨天時流出は,重要なPAHs汚染経路の一つであり,その流出を制御するためには,堆積物中のPAHsの起源解析や各起源の寄与率を知ることが重要となる。そこで,本研究では,自動車排出物(ディーゼル車およびガソリン車),タイヤおよび舗装材を,道路側溝堆積物中の主たるPAHs起源として取り上げ,入手した試料の分析値(22データ)と文献値(64データ)計86データを対象に,16成分のPAH組成比(プロファイル)をもとに,クラスター解析によって6グループに類型化した。タイヤ全8試料は,単一のグループ(S1)として明確に他の起源試料と区別され,平均値としてPyreneが43.5%, Benzo (ghi) peryleneが18.9%となり,両者を多く含有する点が特徴であった。舗装材は,2つのグループ(20%以上を占めるPAHs成分がないS2とPhenanthrene, Pyrene, Fluorantheneの合計が全体の75%以上に達するS3)に別れて類型化された。S2とS3のほとんどは,舗装材と粒子状のディーゼル車排出物試料により構成されていた。ガソリン車排出物はS4~S6の3つのグループに別れて類型化され,Naphthaleneを多く含む点において明確に他の3グループと異なっていた。 都内の側溝堆積物4試料のPAHプロファイルを対象に,重回帰分析によって類型化された各起源グループ(S1~S6)の寄与率を求めた。環七通りの2試料はともに起源グループS1の寄与が大きく,50%以上を占め,S2と合計すると80%を超えた。一方,桜田通りでは起源グループS2の寄与率が全体の75%以上を占めた。起源グループS1とS2に含まれる起源試料から判断して,環七通りではタイヤ,桜田通りでは舗装材またはディーゼル排出物に由来するPAHsが側溝に多く存在している可能性が示唆された。