著者
駒澤 正夫 ホセ パンティーク エディー リスタンコ
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.133-142, 2014
被引用文献数
3

イロシンカルデラの地下構造を把握するため1996年2月にBulusan火山およびその周辺で重力調査を実施した。測点は標高の低い山麓の道沿いに限られ,測定数は225点となった。火山の山体に近い密度である 2,300 kg/m<sup>3</sup>(2.3 g/cm<sup>3</sup>)の仮定密度のブーゲー異常図は,山体部に測点がなくても実際の重力異常を表すと考えられる。重力異常にはカルデラ壁に対応する急勾配がBulusan火山の東から南を経て西に存在することがわかった。しかし,カルデラの北縁については勾配構造が明瞭ではなかった。Irosin townは急勾配構造の内側にある低重力異常域にある。重力の3次元解析から得られた重力基盤にはカルデラ壁を含むカルデラ領域を示す直径 15 kmほどの円形構造があることがわかった。さらに,その円形構造の内側には直径 5 kmほどの急勾配の壁で仕切られた漏斗状(上下逆さまの円錐)の構造が存在し,深さは 1.5 kmに達することがわかった。つまり,イロシンカルデラは,陥没構造が一カ所だけ確認でき,大量の火山砕屑物の噴出を伴った大規模噴火(複数回の場合も含む)は,ごく狭い領域に限られることを示している。また,重力異常による質量欠損の計算から約 40 km<sup>3</sup>の領域から1.1 × 10<sup>10</sup> トンの火山砕屑物を噴出したと推定され,既存のカルデラの直径と質量欠損の関係と整合的である。